Dr.マルオの歯科大学では教えてくれないヒト・モノ・カネ・情報
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hapter3 Cリーダーシップ編EBMの考え方トップダウントリートメントデザイン®という考え方▶▶▶10. 治療計画の立案・コンサルテーション 治療方針・計画を立案するうえでエビデンスの重要性は前項で述べましたが、Evidence-Based Medicine(EBM)という考え方は、実は科学的根拠だけで治療を行うものではありません。図18のように、治療方針を決める要素として、他に「患者の病状と環境」、「患者の好みと行動」、「医療者の臨床経験」という3つの要素も重要になります。 つまり、治療の手段はエビデンスに基づいていくつかの治療法を抽出しますが、実際には術者の力量と照らし合わせ、実現可能な治療を提案します。さらには患者さんの環境や価値観などの条件によっても治療の順序や優先度は変動します。このようにエビデンスがあるからといって、必ずしもその治療提案が患者さんにとって最良なものであり、治療が実現するとは限らないことも理解しておくべきでしょう。 著者が治療計画を立案するうえで、推奨している方法が 「トップダウントリートメントデザイン® 」 という考え方です(図19)。この考え方は著者自身が命名し、商標登録を取得しています。これは、EBMで重要とされた「医療者の臨床経験」や「患者さんの好みと行動」といった他の要素をいったん排除し、「まずは医学的に 『超理想的』治療計画を立案し、理想的な治療方法から現実的に受け入れられる治療へ落とし込みましょう」という考え方です。 もう少しかみ砕いて説明しますと、患者さんの希望や予算、歯科医師の技術面などの要素は、いったん排除してその患者さんの口腔内を機能・審美的にベストな状態に回復し、長期にわたり良好な予後を保てる治療を検討します。もちろん、現実味のないかなり高額な金額になることもありますが、あくまでそれは「患者さんの口の中をすべて完璧にした場合」としてのシミュレーションです。そこから患者さんの希望や予算、優先度などの条件をすり合わせて、患者さんにとって最適な治療へと落とし込んでいくことが重要です。124トップダウントリートメントデザイン®の考え方術者の限界や患者さんの希望はいったん置き、超理想的な治療計画を立てる癖をつけよう!

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