非う蝕性歯頸部歯質欠損 NCCL
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1おさえておきたいNCCLに関する基本情報2症例編3主要論文のレビュー3)歯肉退縮の分類(Cairoの分類)Miller class Ⅰ:歯肉退縮が歯肉・ 歯槽粘膜境(Muco-Gingival Junction:MGJ)を越えず,隣接歯間部の軟組織,歯槽骨の喪失がないもの.4)NCCLをともなう歯肉退縮に対するディシジョンメイキングプロセスMiller class Ⅲ:歯肉退縮がMGJに到達あるいは越えていて,歯間部の軟組織,歯槽骨の喪失が部分的に認められ,その喪失量が頬側の歯肉退縮量よりも小さい.あるいは歯の位置異常をともなうもの.Class Ⅲは100%の根面被覆は期待できないが部分被覆は可能.10 .臨床的対応107図23a 歯肉退縮の根面被覆の術前評価に国際的にもっとも長い間利用され続けているMillerの分類.その欠損形態によって根面被覆処置の予知性が左右される(参考文献5より引用改変).Millerの分類MGJMGJMGJMGJMiller class Ⅱ:歯肉退縮がMGJに到達あるいは越えているが,隣接歯間部の軟組織,歯槽骨の喪失がないもの.Miller class Ⅳ:歯肉退縮がMGJに到達あるいは越えていて,歯間部の軟組織,歯槽骨の喪失が著しく歯肉退縮量よりも大きく根面被覆は期待できない.修復処置をそれぞれ単独治療が可能なのか,両方必要なのかを意思決定するファクターになる.またサブクラスとして非常に深いV字型欠損を設定した.(A+V),(B+V)として臨床的にマネージメントするうえでの考慮がさらに必要になる. 歯肉退縮は,歯根表面の露出とともに歯肉マージンの根尖方向への移動と定義されている3. さまざまな要因が歯肉退縮の原因とされ,プラーク由来の炎症,歯ブラシによる外傷,歯のアライメント,矯正治療,そして修復処置が挙げられる.歯肉の萎縮は審美的問題,知覚過敏,根面う蝕,NCCLなどの問題を引き起こす4.歯肉退縮の分類は従来のMillerの分類5と,2018年歯周病新分類で新しく提唱されたCairoの分類6がある.この分類はいずれも歯肉退縮に対する根面被覆の予知性を示してくれる分類である. Millerの分類 classⅠ,Ⅱ(Cairoの分類RT1)では歯間部の歯周組織(歯槽骨,軟組織ともに)欠損がなく,100%の根面被覆量が予測される.Millerの分類Ⅰ,Ⅱの違いは,Ⅰでは歯肉退縮部位が歯肉歯槽粘膜境(MGJ)を越えておらず,ⅡではMGJを越えているものを指す. 一方,Millerの分類classⅢ(Cairoの分類 RT2)では歯間部の歯周組織が部分的に喪失しており,その喪失量が頬側の歯肉退縮量よりも小さいことで完全根面被覆の予知性は低くなるが,部分的な根面被覆は可能である.Millerの分類 class Ⅳ(Cairoの分類 RT3)では歯間部歯周組織の喪失が歯肉退縮量よりも大きく部分的な根面被覆も厳しくなる. 予知性のみを考えるとMillerの分類Ⅰ,ⅡとCairoの分類Ⅰは同じであるが,本稿ではNCCLの分類との組み合わせで治療計画が決定されるので,よりシンプルにまとめられるようにCairoの分類を用いることとする. Millerの分類 classⅠ~Ⅳ,Cairoの分類 Recession type1~3のイラストを図23に示す5,6. 単独歯~複数歯の歯肉退縮に対する外科的アプローチが適応の症例では,結合組織移植(CTG)を併用した歯肉弁歯冠側移動術(CAF)がもっとも予知性の高いゴールドスタンダードな治療選択肢として報告されている7が,ある報告によるとNCCLをともなう歯肉退縮は50%を上回ると言われている2. その理由として,前述したようなNCCLに対する根面被覆処置はその歯の表面の地形学的特徴によって検討事項が複雑化するためで,その形態,場所,深さによって治療選択,治療予後,治療成績が変化することが想定される.現在ではそのバリエーションに対してのアプローチ手段が徐々に明確になってきており,以下に歯肉退縮分類(Cairoの分類)とNCCLの分類の組み合わせ別の治療選択を提示したいと思う.

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