準燥1)はじめに2)NCCLに対するアプローチを行うか否かの判断基3)治療手順第 1 章 おさえておきたいNCCLに関する基本情報96図14a ₆にセラミックスアンレーを装着したが,4か月後に知覚過敏を訴えた患者の口腔内写真.図14b 歯肉を圧排して精査したところ,歯頸部歯肉縁下付近に小さなくさび状のNCCLが観察された.図15 知覚過敏を訴えた患者の口腔内写真.かなり深く鋭角なくさび状のNCCLが観察される. NCCLの原因は,ブラッシングによる摩耗,酸蝕など多岐にわたる.そのなかで修復や補綴治療を行うか否かは,歯牙硬組織の実質欠損の状態,知覚過敏などの症状の有無や歯肉退縮をともなう審美的状態によって決定している. 本稿では,NCCLに対して修復および補綴的アプローチを行ったケースや長期経過など多数供覧し,処置にあたっての環境づくりや治療ステップ,使用機材などを紹介させていただき,皆様の臨床にヒントになればと考える. 筆者は,歯牙硬組織に実質欠損があれば,基本的にコンポジットレジン充填(以下,CR充填)などを行っている.とくにくさび状のNCCLの場合は知覚過敏をともなうことも多く(図14a,b),大きさや深さにかかわらずCR充填を行うことが多い.鋭角でくさび状のNCCL(図15)は,セメントエナメル境(以下,CEJ)付近に限局し,幅の2mm前後と狭く,大きな歯肉退縮をともなわないことが多いため,歯周形成外科である根面被覆術で対応することは少ない.逆に,大きな歯肉退縮をともなうNCCLは,なだらかな欠損になっていることが多く,Millerの分類を考慮し根面被覆での対応,もしくはCR充填との併用も治療の選択肢に加わる. 当院におけるくさび状のNCCLに対する現在の治療ステップは以下の通りである.1.ラバーダム防湿もしくは圧排糸による歯肉圧排①症例1 NCCLを修復する場合,修復と同時にその原因の説明と,その部位のブラッシング方法の変更を徹底し継続しなければ,NCCLの再発を繰り返す可能性がある.約10年ぶりに来院された70代の女性.下顎前歯歯頸部に極度なくさび状のNCCLが観察された(図16a,b).12年前の初診時の写真を見返してみると,₁₁に多少はくさび状の欠損が観察できるが(図16c,d),再来院時と比較するとその進行は劇的である. 対合歯である上顎の残存歯とインプラントは,マグネットを応用したオーバーデンチャー(図16e,f)で10年前に筆者が治療したので,このくさび状のNCCLは,咬合によるものではない可能性が高い.治療の流れを示す(図16g〜r).2.プラークの染め出し3.エアフロー(EMS Japan)にて接着阻害因子の除去4. 被接着面へのアルミナサンドブラスト処理*(エアアブレージョン),現在はシルクパウダーを使用.5. エナメル質のみにリン酸エッチングを行った後,水洗,乾6. プライマーを塗布し,エアブローの後にボンディング材を塗布してから,光照射(光重合)7.CR充填後,光照射(光重合)8.形態修正の後,研磨* アルミナサンドブラストの象牙質への処理は,1液性のボンディングや2液性で象牙質へセルフエッチングプライヤ―のみの処理だと若干接着阻害になるという研究結果が出ているため,現在は接着阻害にならないシルクパウダーでの処理に変えている.ただ,象牙質へのアルミナサンドブラスト後,トータルエッチングすることでアルミナの接着阻害はなくなるので,象牙質へのアルミナサンドブラスト処理後はトータルエッチングができる接着システムを推奨する.
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