ERUTAEF LACEPSI岸本裕充31兵庫医科大学医学部歯科口腔外科学講座連絡先:〒663‐8501 兵庫県西宮市武庫川町1‐1Antimicrobials Administration for MRONJDepartment of Dentistry and Oral Surgery, School of Medicine, Hyogo Medical Universityaddress:1-1 Mukogawa-cho, Nishinomiya-shi, Hyogo 663-8501Kishimoto Hiromitsu 薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)を発症するリスクのある患者に,抜歯などの観血的処置をする際に,抗菌薬の予防投与はどのようにされているであろうか.また,骨露出などの症状があるMRONJへの抗菌薬の投与はどのように考えればよいか.2023年に改訂されたわが国のポジションペーパー(PP 2023)1には抗菌薬の具体的な投与法については明記されていないので,抗菌薬投与のガイドラインなどで述べられている一般的な原則をどのようにMRONJに当てはめるかについて,筆者の私見も交えて解説する. MRONJに限らず,口腔外科で抗菌薬を投与するのは手術部位感染(surgical site infection:SSI)を「予防」する目的の場合と,もう1つは感染症に対して「治療」目的の場合の2つである.目的が異なるので,ターゲットとする菌種も異なり,抗菌薬の選択と投与期間も別の考え方が必要となる.「治療」に比べ「予防」のほうが選択の幅は少なく,投与期間も短い. 「抜歯後の歯槽骨炎(いわゆる「ドライソケット」)かな,と思っていたが,8週間経過しても治癒せずMRONJと診断された」というような経過を示すMRONJが当初は多かったため,抜歯は最大の局所性リスク因子と考えられていた2(表1左).処方医からは,「歯科での術後管理が適切であれば発症しなかったのでは」という声も多く上がった.果たしてそれは正しかったのであろうか? その後,低用量(≒経口)ビスホスホネート製剤(BP)投与中に顎骨への歯科用インプラント埋入手術をした患者にMRONJが多発することはなく,「骨への侵襲が絶対的なリスク因子ではない」と推察されるようになった.また,抜歯を契機(=trigger)にMRONJと診断されるケースが多い(文献3では67%)のは確かであるが,抜歯時にすでにMRONJ(もしくはMRONJの手前の顎骨骨髄炎)が抜歯部分に「潜在」しており,「抜歯によってMRONJが顕在化」したのでは,と考えられるようになった4.抗菌薬を投与する場面は2つ予防と治療MRONJ発症のリスク因子としての侵襲的歯科処置特 集薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の歯科・口腔外科における対応(第2報)MRONJへの抗菌薬の投与
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