口腔機能低下症読本
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壁になるまた噛むCHAPTER1 口腔機能に目を向けてみよう図3 歯が28本揃っていたとしても,他の口腔機能との協調がなければ「咀嚼」することはできない.図4 咀嚼の際には,頬側口腔前庭部に食べものが落ちないように頬粘膜が壁となることで,舌側に食べものを落とす(参考文献2,3より引用改変).図5 舌側に落とされた食べものは唾液と混ぜられ,舌のはたらきにより臼歯部咬合面上に戻され,再度噛むことが可能となる(参考文献2,3より引用改変).咀嚼は歯の存在だけではなく周囲の口腔機能との協調が必要 では,なぜ食べられなくなるのでしょうか? そこには口腔機能が大きくかかわっています.「食べる」を大きく分けると,「咀嚼」して「嚥下」することになります.ここでは,その咀嚼と嚥下についてそれぞれ口腔機能がどう関与しているか考えてみましょう.まずは歯が28本すべてある口腔内を想像してみてください.はたして歯のはたらきだけで「咀嚼」は可能でしょうか(図3~5)?  可能ではありませんよね.仮に歯でしっかり食べものを噛んだとしても,歯だけのはたらきではそれ以上のことはで歯が揃っていれば咀嚼できますか?きません.1回噛んで終わりです.「咀嚼」というのは,歯で食べものを噛むことも重要ですが,その際に頬粘膜や口唇が頬側・唇側の口腔前庭に食べものが落ちないようにガードし,舌側に食べものを落とし,それを舌が唾液と混ぜて臼歯部咬合面に運ぶことで再度噛むことができる,つまり「咀嚼」することができるわけです.そのため,しっかりと「咀嚼」を行い食塊形成するためには,歯で噛むということに加えて,口腔周囲筋との協調や一定の唾液量,舌のはたらきなどが必須となります.15落ちる噛む唾液が出る唾液を混ぜて戻す

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