鈴木宏樹咬合の回復咬合の回復口腔機能の回復食の回復口腔機能の回復食の回復図1 超高齢社会の現状として,咬合の回復が必ずしも口腔機能の回復や食の回復につながらない場合も多くなっている(参考文献1より引用改変).14図2 高齢期には歯が多く残っていたとしても,食べられない方が多くいる. 今,この書籍を手にして読んでくださっている方の多くは,日常的に食事をおいしく召し上がっていることと思います.当たり前のことのように感じるかもしれませんが,それはなぜでしょう? 歯が多く残っているからでしょうか? 皆さんがご存知のように,食べるためには歯が重要です.そのため私たちは少しでも歯が多く残るように,予防を含めた歯を失わないための治療に力を注いできました.それでも歯を失ってしまった場合には,インプラントや有床義歯などの欠損補綴を用いて咬合の回復に努めてきました.そうすることにより,患者がずっとおいしく食事ができるものと思っていました.超高齢社会の現状:咬合の回復=食べられるではない しかし,そうではありませんでした.もちろん,歯を残すことが間違いという意味ではありません.歯を残す,補綴することは食べるためにとても重要なことです.実際に,私の世代は大学教育においても「咬合の回復」が「口腔機能の回復」であり,それが「食べる」につながると習ってきました.しかし,人生100年時代といわれるほどに多くの方が長生きするようになった現在においては,「咬合の回復」が必ずしも「口腔機能の回復」,そして「食べる」につながるとは限らないのです1(図1).たとえ歯がしっかり残っていても食べられない方が多くいることは,私たちが知っておくべき超高齢社会の現実の1つなのです(図2).従前超高齢社会口腔機能の重要性 1
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