2症例24 この患者に対しては,GGOと従来の間接法を用いて,遊離端修復である₆₇の補綴装置をそれぞれ2つ製作し,両者の咬合面形態の間にどの程度,違いがあるのかを検証した. 臨床的には,GGOにより製作した補綴装置は装 GGOで製作した補綴装置と間接法で製作した調整前の補綴装置をデジタルデータの重ね合わせで比較したところ,咬合面形態において大きな誤差(部位によって200~300µm以上,高かったり,低かったりしている)が生じているのが確認できる(図2h~j). われわれが補綴装置装着時に口腔内で行っている咬合調整は,この誤差を小さくし,患者が違和感を感じることなく,補綴装置が機能することを目指しているが,高い部位は削合することができるものの,低い部位はそのままの状態になってしまう.誤差の大きさは間接法の各ステップの精度を高めることで,ある程度は縮小することができると考えられるが,一定量は間接法の限界として残存するであろう. 次に,上書き前後のファイナルプロビジョナルレストレーションのデジタルデータを比較し,1か月の間に患者が行ったすべての顎運動により,咬合面形態がどの程度変化したのかを確認した.本症例では咬頭嵌合位における咬合高径の低下はみられなかったが,頬舌側咬頭の斜面に咬耗が認められ,患者のすべての顎運動時(機能運動時,非機能運動時)着時にまったく咬合調整を必要とせずに,患者に調和した良好な機能を獲得することができたが(図2a~f),間接法で製作した補綴装置は咬合がかなり高く,相当な咬合調整を必要とする結果となった(図2g).における干渉部が自動的に,かつ効果的に削合されていることが示唆された(図2k~m). さらに,ジルコニア補綴装置をスキャンして得たデジタルデータと上書き後のファイナルプロビジョナルレストレーションのデータと重ね合わせしたところ,アナログ処理を加えた小窩裂溝部以外はほとんど誤差のない(10数µm程度),同じ形態が得られており,非常に精確に複製できていることが確認された(図2n~r).この高い精度によって咬合調整が不要になる,もしくは必要であってもグレーズ部分のみのわずかな削合にとどめられると考えられる. 現状では,精確な形態複製にはドリルの状態や加工機の設定など,条件を厳密に管理する必要があるが,将来テクノロジーがさらなる進化を遂げ,全自動で高精度の複製が可能になる日が来ることを楽しみにしている. 最終補綴装置の装着時には,たとえ咬合が調和した補綴装置であっても,最初は咬合がやや高く感じられることがある.これは,補綴装置の装着当日までに入っていたプロビジョナルレストレーションの1. 症例の概要2. 術式とその有効性₆₇ 補綴修復
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