インプラント周囲炎ゼロコンセプト
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下顎下縁平面仮想咬合平面下顎両側臼歯部のインプラントの骨結合後に下顎両側小臼歯部の遠心移動と下顎前歯部の叢生を改善することにした。しかし、ここで大きな問題が生じる。矯正治療前の口腔内においてインプラントをどの位置に植立すべきなのかという点である。そこで、矯正治療後の調和のとれた顔貌と安定した咬合とが得られる一つの基準とされているTweedの分析法を利用した。Tweedは、矯正治療の目標を次のように捉えている。①顔面線の最良の均衡と調和、②治療後の咬合の安定、③健康な口腔組織、④能率的な咀嚼機構。そのための条件として、さまざまな治療例を検討した結果、Teedの三角と呼ばれる角度がそれぞれFMA25°、FMIA65°、IMPA90°に近似している必要があると提唱した(図25)。この患者の場合のIMPA、いわゆる下顎下縁平面に対する下顎前歯長軸の傾斜角を正常の値に近づけるということにより前述の矯正治療の目標の中の顔面線の最良の均衡と調和、ならびに治療後の咬合の安定をはかることにした。そこで、初診時の107.89°を日本人の女性の理想値である95°にすることとした(図26)。下顎前歯部を歯根1/3を回転中心に設定しその角度を是正すると、下顎前歯部切端は4mm舌側に入る。さらに、この値が正しいのかを検証するには、顎顔面に対する下顎前歯部の突出度をあらわすL1-Apo Lineにて確認する。図23において、治療前の値が7.21mmであるので、マイナス4mmで、3.21mmとなり許容範囲内にはいる。つまりこの患者は、下顎前歯部を4mm舌側に入れることで顎顔面と歯列の前突度の調和がとれることがわかった。 以上のことより、矯正治療前に適正な位置にインプラントを植立するためのサージカルガイドを作製した。最初に下顎前歯部の傾斜と叢生を是正したセットアップモデルを作成した(図27)。それにCHAPTER 4 インプラント周囲炎を予防するための総合歯科治療の実践―矯正治療とインプラントポジションの問題点―図24 症例4の治療計画。下顎臼歯部にインプラントを植立。上顎右側臼歯部の圧下と上顎左側大臼歯部のアップライト。下顎両側小臼歯部の遠心移動と下顎前歯部の叢生を改善する。図25 Tweedの分析法。・顔面線の最良の均衡と調和・治療後の咬合の安定・健康な口腔組織下顎中切歯歯軸・能率的な咀嚼機構FMA25°FMIA65°IMPA90°矯正治療の目標FMAIMPAFMIA183フランクフルト(FH )平面

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