KEYWORDアライナー矯正治療においては、前歯の舌側傾斜にともなう相対的な挺出を利用することで、オーバーバイトの改善は比較的予測実現性が高いといえる。一方で、歯を長軸方向に挺出させるような絶対的挺出はアライナーが外れる方向への移動であるため、予測実現性が低いとされる。 [小松昌平]Ⅱ級開咬症例南舘この症例は、結構バッカルジェット(側方被蓋)が小さいというか、低位舌ですよね。岡野はい。それが原因で、下顎の歯列が少し広めになっていると感じます。ただ、そこに目をつけるのがこの症例のポイントかなと思っているんです。南舘臼歯の早期接触の原因となっていそうですね。第三大臼歯についてはどう考えますか?岡野僕は基本的に、がんばって全部抜いてもらうことが多いです。南舘第二大臼歯のコントロールが必要ですしね。岡野そうです。第一大臼歯・第二大臼歯の臼歯部だけが咬合しているような開咬症例は治療が難しい挺出量ことが多いので、基本的には臼歯をある程度フレキシブルに動かせるよう、第三大臼歯はないほうがいいと思っています。それで、側面セファログラムを見て一番嫌だなと思ったのが、下顎前歯部の歯槽骨の厚みが相当薄いというところです。下顎も上顎も歯軸が比較的整直しているんですが、そこが治療を難しくするかなと思いましたね。南舘それは、前歯を舌側に傾斜移動することで相対的な挺出がおこるはずなのに、この症例ではすでに歯軸が舌側にあるので、それが難しいということですか? 岡野そうなんです。舌側への傾斜移動があまり積極的にできない症例なので。南舘確かに。前歯の歯軸が唇側傾斜していればよかったんですが。挺出量Takao Minamidate ×Shuichiro Okano17相対的挺出抜歯スペースの閉鎖などにより、歯根の抵抗中心を支点とした傾斜移動とそれにともなう挺出が生じる。これはアライナー矯正治療においては予測実現性が高い移動様式であり、一般的にオーバーバイトが小さい症例では有意にはたらく。しかし、本症例ではすでに歯軸が直立している点と、歯槽骨の薄さから抜歯による舌側移動は困難であると考えた。絶対的挺出歯を長軸方向に挺出させる移動様式だが、咬合面を覆うアライナー矯正治療においてはアライナーが外れる方向にかかる矯正力であるため、難しい移動のひとつである。症例ディスカッション相対的挺出と絶対的挺出開咬症例難易度判定―相対的挺出を使えるかDISCUSSION
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