AR1医療者と患者の人間関係が損なわれた状態。人間関係が保たれていれば、患者の変化への抵抗は単に維持トークとして表れるが、不協和の状態にあると、患者は相手の非難や敵意など、ネガティブな感情に支配されてしまう。例)禁煙したくない人に一方的に禁煙するべきと説得していたら、まったく口を聞いてくれなくなった。きっとゴウハラさんにも事情があるのよね……大変だったんですね昔みたいにモリモリ肉が食えたらねェ……しかし、医療者と患者さんの間の人間関係が悪いと、変化(チェンジトーク)を引き出そうとしても互いに否定的な感情に支配され、相手に対して批判的になったり、敵意をもったりしてしまうのです。この場合も、患者さんは変化に抵抗を示してしまいます。これが、MIでは関わる段階を重要視している理由です。この人間関係が壊れてしまった状態を不協和といいます。もし不協和に陥ってしまったら、ここからの脱出を試みます(第12章で解説)。まずは、不協和にならないよう、医療者は正したい反射を抑えましょう。 さて、本ケースのゴウハラさんは、歯科医院に定期的に来院はされますが、セルフケアへの意欲はなく、歯科医療者にお任せ、「来ているのだからなんとかしてよね」という患者さんです。初心者を卒業したあやかさん、正したい反射を抑え、OARS+EPEを意識して使いながら、関わる段階を進めています。不協和は起こっていません。そして、ついに、準備段階のチェンジトーク、「モリモリ肉が食えたらねぇ……」1が出てきました。それにより、あやかさんは、ゴウハラさんも両価性をもつ患者さんであることに気づきました。次章からは、いよいよ、あやかさんとゴウハラさんがMIの丘を上っていきます。59第10章 どこかにあるはず……変わりたい気持ちチェンジトーク その1正確な共感MI精神不協和ええ〜もう大変ですよ本当に……複雑な聞き返しこれは……!なんたって経営者だから体がだいじなのにやっぱりゴウハラさんにも両価性があるんだ“隠されたチェンジトーク”‼体調もここ最近ずっと良くなくてねしっかり噛めないから何を食べてもおいしくなくてこの気持ちをもっと引き出せば……!
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