13インプラント治療におけるDX―臨床応用の現状・課題・近未来展望―図1 歯科治療におけるDX.デジタルセットアップシミュレーション診断インフォームドコンセントクラウンブリッジ矯正治療■シミュレーション診断の特徴 CT画像の読影は必ずしも容易ではなく,経験豊富な歯科医師であっても,CTの平面的なスライス画像上で要注意とされる解剖学的形態を避けながらインプラントの三次元的埋入位置を決定することは簡単ではない(図2,3).一方,シミュレーション診断専用のソフトウェアを活用すれば,CTの画像データをもとにPCのモニター上に顎骨の3D(立体)画像を構築し,その3D画像上でインプラント埋入位置のシミュレーションを行うことができる. シミュレーション診断の長所,かつその最大の特徴は,通常はわれわれの頭の中にあって,他人どうしが見せ合うことのできなかった「三次元的なイン口腔外科インプラント立されつつある. ガイデッドサージェリーによる医療安全の強化,IOSによる作業工程の簡略化と治療時間の短縮などの多くの長所が確認され,デジタル機器は広く普及している一方で,いくつかの課題も明確になり,デジタル機器が必ずしも万能ではないことも次第に明らかとなってきた. 本稿では,インプラント治療に活用されているデジタル機器の特徴だけでなく,あえてその課題についても踏み込んで紹介し,さらにその解決法についても言及する.そして,デジタル技術を用いて先人たちの知識と技術,貴重な経験を可視化・情報共有することによって,安全かつ精度の高いインプラント治療を実践するための一助となれば幸いである. インプラント治療におけるデジタル化の潮流はCTの活用に始まったと考えられ,20年以上前にまでさかのぼる.それはシミュレーション診断とガイデッドサージェリーの開発によるところが大きく,本治療法を導入することによってエキスパート並みの読影と埋入窩形成を効率的に行うことが可能となり,安全かつ正確なインプラント治療の普及に大きな役割を果たしてきたといっても過言ではない.さらに,ガイデッドサージェリーのトレンドは,ダイナミックナビゲーションシステムという新しい治療技術にも分枝し,ガイデッドサージェリーは,サージカルガイドプレートを使用するスタティック(静的)ナビゲーションシステムと,ドリルの位置をリアルタイムでモニタリングするダイナミック(動的)ナビゲーションシステムとに分けて考えられるようになってきた. 現状では,シミュレーション診断とガイデッドサージェリーの組み合わせを従来法,その発展形をダイナミックナビゲーションシステムという考えかたもあるが,今後もカメラやセンサーの発展でさらなるパラダイムシフトが起こることも予想される.外科処置におけるDX診察・検査・診断
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