医療法人伊東会 伊東歯科口腔病院連絡先:〒860-0851 熊本県熊本市中央区子飼本町4番14号廣瀬知二服薬支援服薬支援1)ポジショニング 服薬トラブルを防ぐには服薬時の姿勢が重要である。椅子に座って服薬する場合は、かかとをしっかりと床に付けることで、姿勢が安定して嚥下が容易になる。また、服薬するために上を向く動作を目にすることがあるが、上を向くと、咽頭と気管が一直線になるため、誤嚥しやすくなる。首の角度は顎を引いたうつむき加減の姿勢をとる。首を前屈することで、咽頭から気管に角度がつくため、誤嚥しにく別冊 the Quintessence特集─高齢者特有の口腔粘膜疾患と薬に迫るはじめに 服薬とは、水分と薬剤という異なるテクスチャー(texture:質感)を同時に飲み込むことであり、嚥下機能が低下した患者にとっては難易度が高い行為である。要支援・要介護1認定の高齢者であっても、その2~3割は薬を飲み込めない、喉や胸につかえる、といった経験をしているとの報告があり1、服薬を困難と感じている高齢者は多い。 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」には、処方の確認、見直しは医師・歯科医師・薬剤師が中心となると明記された上で、生活の質(Quality of Life:QOL)の維持向上を共通の目的として、服薬状況の管理や服薬支援も担う多職種との連携が必要であるとされている2。 その中で、歯科衛生士の役割として、「口腔機能や嚥下機能を確認し、薬剤を内服できるかどうか(剤形、服用方法)、また薬物有害事象としての嚥下機能等の確認」が求められている。 個々の患者に適した服薬支援は薬剤師が中心となって行うが、歯科医療従事者も服薬支援についての知識を有して、多職種と連携して対応する必要がある。 本稿では、高齢者の服薬に関連したトラブルと服薬支援について述べる。服薬トラブル服薬トラブル 服薬時のトラブルとしては「残留」「誤嚥」「逆流(胃食道逆流)」があげられる。「残留」とは、飲み込んだ薬剤が口腔や咽頭、食道に付着して残る現象であり(図1)、粘膜損傷・潰瘍発症のリスクとなる。薬剤が残留しやすい部位を図2に示す3。薬剤が「誤嚥」されると、気管や肺組織に損傷が起こる。とくに錠剤やカプセル剤がそのまま誤嚥された場合は気道損傷や無気肺、窒息などの重大な事態が起こり得る。「逆流」は一度食道に入った薬剤が逆流して気道に入り「誤嚥」をきたす現象である。服薬時の嚥下障害は患者自身も介護者も気づいていないことがある。PILL-5のようなアセスメントツールの使用が有用である(図3)4。PART230嚥下機能が低下した高齢者への服薬支援
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