薬YEARBOOK
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口腔カンジダ症の分類(臨床視診型)1)急性偽膜性カンジダ症(図1) もっとも典型的なタイプで、白色の苔状物が点状にみられる。白苔はガーゼや綿球などで容易に剥離できる。病変は口腔のどこにでも発症するが、歯肉は少ない。国際医療福祉大学病院歯科口腔外科連絡先:〒329-2763 栃木県那須塩原市井口537-3岩渕博史口腔カンジダ症とは 口腔カンジダ症は主にC.albicansによる日和見感染症である。C.albicansは口腔の常在菌であるが、病原性が弱いため、口腔での菌数が他の菌に比べて有意に増加しないと症状を生じることはない。それが加齢やがん治療、免疫抑制薬の使用などにより宿主の抵抗力が低下したことで、日和見感染症として発症する。また、口腔カンジダ症発症には口腔の状態が大きく関与しており、がん薬物療法による口腔粘膜炎、義歯の使用、口腔乾燥症、口腔衛生状態の不良が発症リスクを高めている。そのほか、抗菌薬の長期使用による菌交代症で発症することもある。口腔カンジダ症の自覚症状には疼痛やピリピリ感、22味覚異常があり、他覚所見には拭って除去できる口腔粘膜の白斑や、発赤、びらん・潰瘍がみられる。 診断は臨床症状と各種検査により行われる。検査には主に顕微鏡検査法、培養検査法などが行われている。カンジダは常在菌であるので、真菌培養によりカンジダが検出されたのみでは診断できないことが重要であり、カンジダを診断するうえではさほど重要ではない。カンジダ特有の臨床症状を有していることが重要である。顕微鏡検査法ではグラム染色やPAS染色、ギムザ染色などにより仮性菌糸を確認する。C.albicansは仮性菌糸を伸ばす際に病原性を示すので、仮性菌糸が確認できれば口腔カンジダ症と診断することができる。2)慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症(図2) 硬口蓋や舌、歯肉などに暗赤色の紅斑がみられるタイプで、義歯使用者の義歯床下の粘膜にみられる発赤も萎縮性カンジダ症である。別冊 the Quintessence2.口腔カンジダ症口腔カンジダ症1特集─高齢者特有の口腔粘膜疾患と薬に迫るはじめに 一般的に老化にともない、さまざまな疾患が増加するが、口腔においても例外ではない。口腔における生体組織の加齢現象は、不可逆性に生じる退行性変化で成熟期以降誰にでも普遍的に起こる。口腔組織の老化現象で特徴的なことは、歯の喪失によって大きな環境変化が起こる。このことは体幹や四肢ではみられない。また、免疫機能の低下や他疾患にともない、二次的に生じる疾患も少なくない。PART1高齢者に多い口腔粘膜疾患と治療薬

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