これまでの骨造成、これからの骨造成
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1992年 新潟大学歯学部卒業、新潟大学歯学部第一補綴学講座入局2011年 表参道デンタルオフィス開業2017年 新潟大学大学院歯周診断再建学分野博士課程修了JIADSペリオ/インプラントコース講師、米国歯周病学会、日本歯周病学会認定医、OJ理事はインプラントを既存骨へ埋入した群とGBRで造成した硬組織に埋入した群を12年以上にわたって比較し、辺縁骨の吸収量に差がないことを、また2017年にBenicら3は15年の経過においても両群の骨の変化に差はないことを報告している。さらに、Jungら4は2021年の報告で、22〜24年とより長期にわたってGBR群と既存骨埋入群を比較し、インプラントの残存率や近遠心および頬側の辺縁骨の吸収に差がないことを示している。 筆者の臨床においても約15年前からGBRをともなうインプラント治療を行い、また可能な限りインプラント周囲の軟組織の改善を図ることも併せて行ってきたが、ほぼすべての症例において機能的に問題はなく、中長期的にみておおむね良好に経過している。2010年5と2014年6に本会で発表した症例はGBR併用にてインプラント治療を行った症例であるが、その予後を供覧する(図1、2)。48根本康子Yasuko Nemoto東京都開業はじめに Guided bone regeneration(骨再生誘導法、以下GBR)による顎堤増大術は他の方法と比べて、比較的侵襲が少なく簡便な方法であり、近年は有用な生体材料や成長因子の開発、テクニックの改良などにより、合併症のリスクも軽減され、予知性も格段に向上したといえる。多くの臨床医がインプラント治療においてGBRを日常的に併用しており、その中長期的な経過も見えてきた昨今、それらを検証するフェーズに入ってきたのではないだろうか。 本稿では、GBRを併用しインプラント治療を行った中長期的経過症例を検証し、その長期的な安定において悪影響を及ぼす要因、さらにそれを回避するための要件などを考察したい。顎堤増大の意義と方法、GBRの長期的予後 著しく吸収した顎堤に対するインプラント治療では、顎堤増大を行うことにより機能の回復のみならず清掃性や審美性も向上するため、そのメリットは大きい。 顎堤増大のための骨造成の方法は種々あるが、仮骨延長術、インレーブロック骨移植、アンレー、GBRを比較したメタ分析1によると、4mmまでの垂直的顎堤増大であればどの方法でも高い確率で達成できると報告されている一方、GBRは合併症が少なく術後の骨吸収も少ないため、垂直的骨造成において有効な手法だとも述べられている。 GBR後の長期的な安定について、2013年にJungら2症例Aと症例B インプラント治療をしたこの2つの症例は、患者がどちらも女性で年齢も近く(62歳と65歳)、欠損も上顎前歯インプラント周囲組織の長期的経過に違いがみられた2つの症例 機能的に問題はなくとも、許容範囲内ではあるが周囲組織の退縮を認める症例もあり、それらは経年的な硬組織または軟組織の吸収が起きているものと考える。変化がなく(もしくはわずかな変化で)安定しているものとそうでないもの、これらに影響を与えるものを考察してみたいと思う。シンポジウム1GBRおよび軟組織再建により顎堤増大を行ったインプラント周囲組織の中長期的経過後の検証

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