a図1-a~c 赤毛サルを用いたrhBMP-2の前臨床試験結果。a:30mmの下顎骨区域切除を施行した。b:rhBMP-2により再生された顎骨へインプラントを3本埋入し、咬合させ、再生骨は維持された。c:再生部位の組織研磨標本。外側に皮質骨が形成されている。1997年3月 東京医科歯科大学歯学部卒業2000年3月 東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了2000年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院口腔外科 医員2002年4月 日本学術振興会 特別研究員2004年8月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野 助教2017年4月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野 准教授2021年8月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔再生再建学分野 教授 現在に至る。日本顎顔面インプラント学会専門医、日本口腔外科学会専門医・指導医、日本再生医療学会認定医、日本口腔インプラント学会、日本バイオマテリアル学会cb1230mm丸川恵理子Eriko Marukawa東京医科歯科大学口腔再生再建学分野・口腔インプラント科はじめに まだ「再生医療」という言葉が定着する前、平成8〜13年度に未来開拓学術研究推進事業である硬組織の再生医工学プロジェクトにかかわり、初めて「再生医工学」といった言葉を耳にした。この頃から20年以上、いわゆる医工連携を始めており、骨・顎骨再生の基礎的・臨床的研究に従事してきた。いまだ、大きな顎骨欠損に関しては血管柄付き骨移植が行われている反面、最近はいくつもの骨補填材が国内でも承認され、歯周病においては遺伝子組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(recombinant human-basic fibroblast growth factor: rh-bFGF)製剤(リグロスⓇ、科研製薬社)も使用されるようになり、顎骨における再生医療は20年前とはかなり変化し、発展している。本稿では、筆者が行ってきた骨造成・顎骨再生治療に関して、過去から現在までの変遷と今後の展望について示したい。 成長因子・培養細胞を用いた顎骨再生医療 1990年後半、当大学にて成長因子である遺伝子組換えヒト骨形成タンパク質(recombinant human bone morphogenetic protein-2:rhBMP-2)を用いた骨再生の前臨床試験(図1)にて、大きな顎骨欠損をrhBMP-2と足場材料であるゼラチンで再生させることができ、完璧な結果を示していた1、2。しかし、臨床治験の成績は50%程度の成功率に留まり、上市されない残念な結果となった。若いラットと比べて老齢ラットでは十分な骨形成が得られなかったことから(図2)、幹細胞や他の成長因子が必要なのではないか、またゼラチンではなく、現在使用されているような骨補填材を用いていた場合に結果が変わっていた可能性があると結論付けていた。 2000年頃、多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)に関する研究を行ってきたが3〜7、これは基本的に細胞増殖を増加させ血管誘導を促すが、BMPとは異なり骨特別講演骨造成・顎骨再生治療の変遷と今後の展望成長因子・培養細胞を用いた顎骨再生医療
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