1.義歯装着患者への説明と指導PART 2 外来での義歯ケア・ホームケア川西範繁/木本克彦・自分がどのような義歯を使用しているか患者自身によく確認してもらい,それに指導を集約することが肝要.・患者に自身の義歯の状態を日頃から観察してもらうことで,義歯のトラブルを早期発見することが大切.・定期メインテナンス時によくある患者の疑問・質問を把握し,それらに対して適切な指導を行うことが重要.100別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2024」神奈川歯科大学歯科補綴学講座クラウンブリッジ補綴学分野Point本項目のポイント 超高齢社会のわが国において,義歯を使用する患者(とくに後期高齢者)は増加の一途を辿っている1.日常臨床では,義歯装着患者に対して十分な清掃や装着指導を行ったとしても,再来院した際には術者が意図したような管理ができていないことが多く,定期的な義歯メインテナンスの重要性が高まっている.本稿では,定期的なメインテナンスにおける義歯装着患者への説明と指導法について解説するとともに,患者からよくある疑問・質問についても紹介する.1)義歯の管理方法について 定期的なメインテナンスを行うにあたり,患者がどのように義歯を管理しているかを知ることは重要な情報となる.義歯管理や清掃状態の実態を把握することで,指導すべき内容も整理される.日本老年歯科医学会より義歯管理指導の指針として,義歯管理状況調査票も公開されているため参考にするとよい2(図1). 義歯装着患者は,おおむね複雑な義歯の設計であればあるほど自身の義歯の形態を理解しきれておらず,義歯のケアに関しても同様であり,患者自身の義歯のケアに必要な知識があまり定着していないことが見受けられる. このようなことから,患者(あるいは介護者)の理解度を上げることが重要で,歯科医師・歯科衛生士が説明するだけではなく患者自身に実際に義歯を手に持ってもらい,「どこが?」「どのようになっているのか?」をよく確認してもらって,それに対して指導を集約することが肝要となる(図2). 実際の臨床現場でも「左上の金具の内側をていねいに磨いてください」と伝えたとしても,複雑な構造やクラスプ数が多い場合などには清掃が困難になることが多い(図3).清掃不良の部位を口頭で説明するだけでなく,実際の義歯を染め出すことによって視覚的に確認してもらうことで,より一層の理解度の向上を期待する(図4). 鉤歯の清掃についても,患者に対して「金具のかかる歯は汚れがつきやすのでよく磨いてください」と説明することが多いが,「金具がかかる歯」と説明してもその形態は患者ごとに異なる.最近では残存歯が多い患者が増えていることから,メタルコーピングやアタッチメント付きの歯冠などを鉤歯とした症例も多く見られる(図5a,b).2はじめに義歯の定期メインテナンスに関する患者説明・指導
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