即時治療の真髄
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①②③③①②図1、2:セメント固定とスクリュー固定の違い 上部構造製作の選択基準として、インプラント周囲炎罹患率の検討は重要なポイントではあるが、前歯部に限定したセメント残留に関する罹患率を検討した論文は皆無に等しい。前歯部インプラント治療本来の目的は審美性の回復とその長期的な維持・安定を図ることであるため、連結装置の選択には意見がわかれるところでもある。そこで、セメント固定とスクリュー固定の上部構造との連結様式の選択基準については、①インプラントの埋入位置と方向②アバットメント・フィニッシュラインの形態と位置③天然歯とは異なる上部構造形態の再現の以上3点で大きく異なる(図1〜4)。治療計画、外科処置そして上部構造製作における試適・調整・装着と術後経過の評価からその優位性とリスクについて各項目から比較検討し、考察したい。セメント固定(図1)スクリュー固定(図2)156図1、2 ①インプラントの埋入位置と方向:セメント固定のほうが埋入の自由度は高い。②アバットメントフィニッシュラインの形態と位置:セメント固定のほうが天然歯に準ずる。③天然歯とは異なるエマージェンスプロファイル形態:スクリュー固定のほうが自由度は高い。前歯部におけるセメント固定とスクリュー固定の選択基準総論 インプラント修復では、真円形態をしたプラットフォームと製作すべき上部構造の大きさと形態の違いから、歯肉縁まで4〜5mm前後(プラットフォーム)に位置させている。そのため、粘膜貫通部形態を生物学的、審美的に許容できる範囲で修正後、上部構造を製作しなければならない。 製作法には、下記が挙げられる。1.上部構造との連結様式の違い(セメントVSスクリュー) 2. 製作術式と方法の違い以下に詳説する。前歯部上部構造製作のリスク鑑別インプラントポジション(埋入位置・角度・深度) インプラントポジションの決定に関しては、即時治療の治療戦略の項でも詳説(1章46頁)している。まず、セメント固定の適応範囲はやや広いが、スクリュー固定を選択する場合には、アクセスホールの位置を基底結節上部周囲にすべきであるため、症例によっては埋入位置がかなり限定され、外科的難度が高くなる場合が多い(1章図52)。また、咬合緊密でアバットメントのクリアランスが不足したり(1章図62)、メインテナンスに支障をきたしそうなインプラント周囲炎のリスクファクターが高いと考えられる症例はスクリュー固定で対応すべきである。 上部構造の連結様式の選択によって、インプラントポジションは決定される。要するに、術前の段階で外科的、歯周的、補綴的リスクファクターを十分に考慮した上部構造製作の選択までを治療計画の段階で決定しておくべきである。

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