インプラント YEARBOOK 2021
2/6

はじめに 10年以上前から,医科領域において「専門医とは何か?」という根源的な問いから始まるさまざまな議論が繰り返されてきた.その結果,医科の専門医を認証する第三者機関として「日本専門医機構」なる組織が発足し,すでに新しい専門医制度が動き始めている.もともと日本では,医科も歯科も,それぞれの専門領域の学会が専門医制度をつくって,各学会が独自に資格認定を行ってきた長い歴史があった.2002年に医療機関の広告規制の緩和にともない,医師または歯科医師の専門性に関し,告示で定める基準を満たすものとして厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定する資格名が広告できることとなり,さらに2007年に団体(学会)の外形基準が新たに示され,多くの学会がそれぞれの専門医を申請し,いわゆる「広告可能な専門医」として広く社会に認知されるようになった. ところが,医科領域の多くの学会が専門医を乱立気味に制度化し,さらに会員の半数以上が専門医の資格をもつような学会も存在し,実態として数年学会に所属すればだれでも専門医になれる状況が生じたことから,専門医という資格の意義が問われるようになってきた.特に患者から見た場合,専門医の資格がわかりにくいという指摘もあり,2011年10月に厚生労働省主導で有識者による「専門医の在り方に関する検討会」がスタートした.そこでの議論の結果,2013年に出された最終答申を元に翌2014年5月に一般社団法人日本専門医機構が発足した. 歯科では,その動きに追随する形で2015年から「歯科医師の資質向上等に関する検討会」の中で歯科医療の専門性に関するワーキンググループによって検討がなされ,その答申を受ける形で2018年に一般社団法人日本歯科専門医機構が設立された. なぜこのような動きが起きたのだろうか.その理由として,日本では専門医制度自体が学会に所属している医師・歯科医師側から必要とされた権威付けの仕組みでしかなかったことが挙げられる.医師・歯科医師中心の医療から患者中心の医療への転換が叫ばれ,DOSからPOS(医師・疾患中心から患者・巻頭特集細川 隆司 Ryuji Hosokawa公益社団法人日本口腔インプラント学会常務理事・認定委員長認定専門医資格取得までの道筋とこれからの専門医制度九州歯科大学副学長九州歯科大学附属病院 口腔インプラント科・教授公益社団法人 日本口腔インプラント学会1111

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る