インプラント YEARBOOK 2021
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 昨年は新型コロナウイルス感染拡大で歯科医療の現場では大変な状況が続き,また学会活動も大幅な制約を受けました.その中で,公益社団法人 日本口腔インプラント学会は第50回記念学術大会を,昨年9月に井汲憲治大会長のもとオンデマンドのWEB配信形式で,約6,000名の登録者を得て開催されました.記念大会のテーマである「インプラント治療 これまでの50年,これからの50年」のもとで,魅力あるプログラムを提供することができました. この50年の間にわが国の歯科医療を取り巻く環境は大きく変わり,社会の少子高齢化の影響や,患者のニーズの変化,さらに歯科医学や歯科医療技術の進歩により,歯科医療の専門化が進められてきました.本邦にインプラント治療を導入し,2つの前身学会を発足させて,今日までの学会の発展ならびにインプラント歯科治療の専門化に貢献された多くの先人の努力に,あらためて敬意を表します. 学会の役割は,会員の学術活動を通じて社会にその成果を還元することです.その一環として臨床系学会では認定制度を通じて国民の健康に貢献する医療人を養成しています.本学会は現在会員16,000名余を有する歯科界最大の学会です.すでに千数百名の専門医がそれぞれの地域で社会貢献を続けています. 戦後の医療改革・教育改革のもとで,医師および歯科医師養成の学部教育ならびに国家試験制度が確立しました.その後の大きな改革は卒後研修制度の必修化で,医師の2年に対して歯科医師は1年以上になりました.医師はその後のキャリア形成において,さらに新しい専門医制度がスタートして,研修修了後に専攻医として大学病院などで研修を続けることになりました.一方,歯科医師にとっては研修修了後に続く生涯学習の場としての学会が重要度を増してきています. 本書では学会認定委員長である細川隆司先生(九州歯科大学)に「学会認定専門医資格取得までの道筋とこれからの専門医制度」について解説していただきました.本文で詳しく紹介されていますが,医科に比べてたち遅れていた歯科における専門医制度が,一般社団法人日本歯科専門医機構の設立とその活動により大きく前進しています.これまで厚生労働省は広告可能な学会専門医として,5学会の専門医を認めてきました.日本歯科専門医機構ではこの5学会の専門医に引き続き,インプラント歯科(仮称)を含めてそのほかの専門医の認証をすべく関係学会と協議を進めています. 今後は歯科界全体で国民に信頼される専門医の養成を進めていかなくてはいけません.そのためにも現在の各学会の専門医制度がベースになりますので,インプラント臨床に携わる関係者においては,本学会認定の専門医制度を理解されて国民の健康増進に貢献していただきたいと思います.宮崎 隆(Takashi Miyazaki)公益社団法人 日本口腔インプラント学会理事長巻頭言99

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