顎矯正手術エッセンシャル
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術中切開 視野の確保と安全に手技を完遂できること,神経障害などの合併症を招かないような配慮が必要である.粘膜切開は外斜線のやや外側寄りに設定する(図2).チタンプレート固定の場合は,外斜線部の切開は外側骨切り相当部よりやや近心に延長しておく必要がある.頬筋の切開時は助手が骨膜剥離子などでカウンタートラクションをかけるpoint 3.point 2付随する手術①開咬症例で大きな反時計回りの回転を要する場合は,舌骨上筋群が抵抗する.②下顎前方移動を行う際に舌骨上筋群の選択的な剥離を行う場合,前歯部口腔前庭に新たに切開を加えることになるので,術前の患者説明において考慮すべき問題である.③大きな下顎後退を要する場合には,上顎の前方移動を併用することを検討すべき(CHAPTER 2 Le Fort Ⅰ型骨切り術を参照).④下顎枝部では後退を要するが,オトガイ部では前後的な位置を維持すべき場合はオトガイ形成術を併用する.point 3切開①粘膜縁からの出血が多くなることがあるので,電気メスで切ってもよいが,頬脂肪体の逸出を招きやすいので注意する.望ましい切開線よりも頬側に設定した際に,頬脂肪体が露出しやすい.のちの骨切りや骨片固定の際の支障になりやすいので,もし逸出したらすかさず吸収性糸で被膜を縫合しておく.②粘膜切開に続いて骨膜を切開するが,外斜線部がもっとも組織の厚みが薄くアプローチしやすい.図2 上方は耳下腺乳頭よりも下方で十分に離れた高さから頬粘膜の切開を開始し,前方(下方)は大臼歯の歯頚部からある程度の距離を置いた頬粘膜に至る弧状の切開を行う.切開PART3 下顎の手術84

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