スズキヒロキの食べるにこだわる高齢者義歯読本
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42GoAを用いずAPEXに近い位置に顎位を設定 複雑な動きが難しい高齢者においては,GoAを用いずにAPEXに近い位置に顎位を設定するために,患者が無理なく自力で取れる最後方位で咬合採得を行っています.しかし,その採得方法が複雑では本末転倒です.できるだけシンプルな方法を用いるようにしています.日常的動作を利用した咬合採得 高齢者にとって簡便で理解しやすい咬合採得は,日常的な動作を利用するものだと考えられます.そのため主に「開口」と「閉口」という,食べる時以外も行っている動きを利用しています. 具体的には上下のロウ堤のどちらかに軟化させたワックスを置いた状態で,ゆっくりと噛んでもらうことで顎間関係を記録しています(図15〜17).その際,いかに患者さんに奥で噛んでもらうかが,とくに重要になります.意思の疎通が図れる場合であれば,奥歯を意識してもらうだけでもよいかもしれませんし,逆に意思の疎通が難しい場合であれば,軽い誘導が必要かもしれません.とにかく,「患者自身で楽に動かせる範囲での最後方位」の採得を目指しています. なお,この場合,ワックスを置く前に1〜2回練習しておくほうがよいでしょう.ワックスを使用する方法は従前より多く提唱されており,さまざまな手法が存在しますが,シンプルで高齢者が理解できればどの方法でもよいと思います.ただ,顎を同一位に保持しておくことは高齢者にとって意外と難しく,咬合採得材料はシリコーンではなくワックスが適していると考えています.また,咬合高径の決定と水平的顎位の決定を同日に行うことで,治療回数を少しでも減らすようにしています.5高齢者に対して簡便で優しい咬合採得方法を!「噛める義歯」にするにはまず「顎位」~その3ワンポイントアドバイス高齢者の水平的顎位決定のコツは…….なるべくシンプルになるべく回数を少なくなるべく後方で

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