スズキヒロキの食べるにこだわる高齢者義歯読本
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38ゴシックアーチの使用が有効だが…… 病院歯科で高齢者の義歯を数多く扱っていると,もちろん咬合様式も大事なのですが,「噛める義歯にするためにはまず顎位が大切だ」と感じています.そのため,どのようにして患者さんの顎位を決定するのかが大変重要になると考えています. 顎位を決定するための方法はたくさんありますが,水平的顎位の決定にはゴシックアーチ(GoA)の使用が有効であると考えています(確定的な方法が確立されていないため,議論が分かれるところだと思いますが……). そのため当初は,すべての義歯患者にGoAを用いて水平的顎位を決定していました(図7~9).治療結果も良好で,とても有用性が高いと感じていましたが,患者さんの全身疾患や状態によってはこちらが意図する動きをしてもらうことが困難な場合も多くあり,そこが悩みでした(図10).また,高齢者の場合,義歯製作期間を少しでも短くしたほうが栄養面でも有利なことが多いため,なるべく少ない治療回数で,なるべく簡便な方法が好ましいと考えるようになりました.そのため,現在はGoAを用いなくても,近い結果が望める方法を模索しながら,顎位の決定を行うようにしています.3ゴシックアーチと高齢者「噛める義歯」にするにはまず「顎位」~その1ワンポイントアドバイス義歯の違いによって,機能も大きく変わります.そのため,義歯製作過程が重要になり,噛める義歯にするためには顎位が大変重要です.しかし,いくら有用性が高い方法であっても,高齢者に常に適用できるとは限りません.患者が楽に行える方法や来院回数を重視したほうが,患者利益につながる場合もあります.

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