歯科医師のための口腔顎顔面痛
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パーソナリティ障害213待されるものから著しく偏り,広範でかつ柔軟性がなく,青年期または成人期早期に始まり,長期にわたって安定しており,苦痛または障害を引き起こす,内的体験および行動の持続的様式」と定義されている(表1).すなわち,「普通とはかなり違う,きわめて偏った性格の人」と言うことである.パーソナリティ障害は,DSM-Ⅳ(-TR)の多軸診断では,第Ⅰ軸(精神疾患名)とは異なる,第Ⅱ軸(パーソナリティと精神遅滞)に分類されていた(P185・Column「顎関節症/口腔顔面痛専門医の頭のなかにある多軸診断」参照).すなわち,パーソナリティ障害は「パーソナリティ(性格)」の問題であり,それのみでは精神疾患ではないともいえるため,実際に,パーソナリティ障害を精神科医が診るべきか否かという点においては議論がある.パーソナリティ障害の患者は,未熟で順応性に欠けるところがあるため,家族,同僚,友人,恋人など多くの人々との関係も悪化しやすい.医療従事者に対しても同じで,しばしば診察室で問題を起こすことがある.歯科医師に対しては当初は遠慮があっても,受付係や歯科衛生士などには自分の感情をぶつけるため,医師よりもコメディカルのほうが先に異常さに気づくことが多い(図2).表1 パーソナリティ障害の特徴資料1その人の属する文化における,一般的人格に比べ,著しく偏った内的体験および行動の持続的様式(この様式は右の①〜④のうち2つ以上の特徴をもつ)①認知(物事の受け取り方,解釈の仕方に歪みがある)②感情性(感情的反応や強さの不安定性,不適切性)③対人関係機能の不全(円滑な人間関係を営むことができない)④衝動の抑制が困難(キレやすい)人格傾向に柔軟性がなく,社会に適応できず問題を起こすその傾向は青年期または成人早期までに明らかになる図2 コメディカルのほうが先に異常さに気づくことが多い.表2 パーソナリティ障害(PD)の分類資料1分類特徴A群(奇妙,風変わり)猜疑性パーソナリティ障害/妄想性パーソナリティ障害猜疑心が強いシゾイドパーソナリティ障害/スキゾイドパーソナリティ障害引きこもり統合失調型パーソナリティ障害風変わりB群(演劇的,易怒,情緒的,突飛)反社会性パーソナリティ障害他人の権利を侵害,反社会的行動境界性パーソナリティ障害不安定な感情・著しい衝動性演技性パーソナリティ障害過度な感情性・人の注意を引く自己愛性パーソナリティ障害誇大性,共感の欠如C群(不安,恐怖)回避性パーソナリティ障害低い自己評価依存性パーソナリティ障害他人任せ,無責任強迫性パーソナリティ障害几帳面,完全主義他のパーソナリティ障害

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