34別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2021」Part2 私のCR修復の現在の臨床的位置づけと最新ケースプレゼンテーション症例1私の現在のCR修復の到達点~最新CR修復プレゼンテーション~ 患者は今まで長年通っていた歯科医院で応急処置を受けたが,最終的には金属の修復物になることに加え,治療しても数年後に新たなう蝕ができると聞き,不安を感じたとのこと.インターネットで歯科医院を検索し来院された. 初診時の上顎右側臼歯部を観察すると,ほとんどの隣接面にう蝕が存在するが(図5),₅₄の咬合面にう蝕はなかった.歯の力学的強度を維持するためには,両隣接面にう蝕が存在していてもMOD窩洞のように窩洞を連続させないほうがよい.辺縁隆線は,頬側から口蓋側を連ねるエナメル質の柱なので,辺縁隆線が1本失われるごとに歯の破折リスクは増加する. そのため,筆者がつねに考えていることは,辺縁隆線をいかに削らずに治療を終えることができるかである.したがって,通常は1歯単位で治療を行いがちであるが,筆者は1隣接部単位で治療を行った(図6~20). また,当院では主訴が審美的な改善であっても,口腔内の状況を診査し,位相差顕微鏡を用いて患者と一緒にプラークを観察しながらブラッシング指導および食事指導を行っている.なぜなら,すぐれた材料を用いて,できるかぎり低侵襲な治療を行っても,残した歯質にう蝕が発生してしまっては元も子もないからである.図7a,b アイボリーセパレーター(エースクラップ,松風)で歯間離開させながら窩洞形成を行う.両隣接面にう蝕が存在した.図5 初診時にはほとんどの隣接面にう蝕があった.図6 歯間離開を行い,₄と₅の間から治療を行う.図5図6ab
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