31別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2021」CR修復の適応におけるボーダーライン表1 約10年前にCR修復の適用にクエスチョナブル(△)および非適用(×)とする意見が多かった窩洞・欠損形態の2021年における筆者の考え.部位欠損形態約10年前の筆者の適用基準とコメント2021年現在の筆者の適用基準や注意点前 歯 部水平的欠損(大)△(2011年):CR修復を適応できなくもないが,強度に不安を残す.また,高い審美性の再現に高い技量が必要で,ラミネートベニアもしくはクラウンが無難.〇(2012年):色調改善には支台歯形成をともなうが,CR修復のほうが歯質切除量は少ない.⇒若年者かつ残存歯に変色などが確認されなければCR修復が第一選択となる.ただし,色調改善や咬合状態,咬耗の進行によっては補綴治療を選択する場合もある.捻転歯〇(2011年):CR修復の適応であるが,追加充填して形態を整えられることが条件.〇(2012年):アドオンのみで治療が可能であればCR修復が第一選択.歯質削除をともない,かつ審美的回復が必要であれば抜髄となる可能性もある.⇒エナメル質内の削合とCRのアドオンのみで審美的改善が可能であれば,CR修復が適応と考えている.しかし,削合が象牙質に達するようであればポーセレンラミネートベニア(以下,PLV)を選択する.正中離開歯◎(2011年):CR修復の適応であるが,離開が大きい場合は適応外の可能性もある.〇(2012年):歯冠形態に問題がなく,正中のみであればCR修復が第一選択.歯冠形態が悪い場合や,離開量が2mmを超える場合などは間接修復が適応となる場合もある.⇒歯冠形態に問題がなく,かつ正中のみであればCR修復が第一選択であるが,離開量が2mm以上存在する場合はPLVを選択する.矮小歯◎(2011年):充填スペースがあればCR修復の適応であるが,なければラッピングなどのテクニックが必要である.〇(2012年):スペースが大きく,離開もある場合でも技術がともなえばCR修復が第一選択となる.しかし,ポーセレンラミネートベニアのほうが審美的回復は容易.⇒CR修復の面積が少ない場合は適応となるが,物性的な安定性やプラーク付着能,歯肉との適合を考慮するとセラミック製の補綴装置のほうがすぐれているため,全面の場合はPLVを勧めている.変色歯△(2011年):事前のウォーキングブリーチなしに,そのまま色を遮蔽してCR修復をすることはあまりない.◎(2012年):色調改善には支台歯形成をともなうが,CR修復のほうが歯質切除量は少ない.⇒部分的な変色であればCR修復が第一選択となる.しかし,全面的な変色の場合は被覆面積を考慮し矮小歯同様にPLVを勧めている.ワンユニットブリッジ△(2012年):CRのみでは強度的な不安が拭えない.しかしファイバーを使用することにより,前歯部であれば可能と考える.⇒前歯部であれば機能的にCR修復は可能かもしれないが,欠損部に対して口腔内で時間をかけて審美的に積層充填するよりも,間接法で製作したほうが審美性はもちろん研磨性においてもすぐれているので,CR修復は第一選択とならない.臼 歯 部咬合面小窩裂溝う蝕(咬頭が大きく欠損)×(2011年):左図の大きさのう窩であればCRが適応だが,基本的に咬頭頂を超えた窩洞形態は適応範囲を超えていると考える.⇒CR修復の適応は,咬合状態にもよるが,機能咬頭,非機能咬頭ともに象牙質の裏打ちがあり,かつ亀裂が見られない健全なエナメル質が咬頭頂から内斜面に1mm以上存在することだと考えている.隣接面う蝕(辺縁隆線が大きく欠損)◎(2011年):CR修復の適応であるが,高度なテクニックを要する.〇(2012年):コンタクトを再現する技術さえあればCR修復の適応と考える.しかし,機能咬頭を含むアンレー形態は適応外だと考える.⇒左図の大きさであればCR修復の適応となるが,筆者の考える隣接面う蝕の適応範囲は,隣接面と頬側面および舌側面の隅角部までと考えている.【編集部注】 2011年の小誌別冊では「CR修復:私の適応範囲と選択基準」と題して,前・臼歯部の各窩洞・欠損形態に対するCR修復を次の基準で判定していただいた.「日常臨床で頻繁に行う:◎,通常平易に行う〇,クエスチョナブルなもの:△,技術的に難易度が高い,また適用外と考えられ避けたいもの:×」.2012年の小誌別冊では「修復・補綴のボーダーラインと考えられる形態への私のジャッジ」と題して,前・臼歯部の各窩洞・欠損形態に対して,CR修復と補綴治療のどちらを行うべきかを,以下の基準で判定していただいた.「必ずCR修復:◎,条件によるが,通常はCR修復:〇,クエスチョナブル:△,CR修復は避けたい:×」.上記の表は,これらの判定において,とくに△(△)や×が多かった窩洞・欠損形態について,2021年現在の著者の考え方を問うものである.
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