35Chapter 2 根管治療の分かれ道 機械的拡大・形成ことのメリットが2つある.1つは,根管治療中,水硬性セメントとプロビジョナルクラウンによる確実な二重仮封状態を保てること.もう1つは,根尖組織の破壊を認め,水酸化カルシウムで数か月以上の経過を待つ必要のある場合,プロビジョナルクラウンを装着していれば歯周外科を根管充填前に先行して行えることである.図3a デンタルX線写真.₇のアクセスオープンが十分でないために,ほとんど根管に根管充填材が入っていなかった.図3b CR充填とセメントの除去後.遠心部には取り残しによる深い歯肉縁下う蝕を認めた.除去すべき天蓋も残存しており,根管口は採光して覗き込まないと見えない.図3c 髄角を含めた天蓋の除去後.根尖孔までのファイルのアクセスを考慮し,近心頬側壁はファイルの挿入を阻害しないように意図的にしっかり削除した.その結果,樋状根の根管口がはっきり認識できる.図5 a:₃の2根で2根管の症例.前医は舌側根管を見落とした可能性が高く,大きな根尖病変が見られる.b:根管充填1年11か月後.根尖病変のあった根尖も治癒が確認できる.ab図2a ₆の抜髄症例.近心隣接面に歯髄に及ぶ大きなう蝕があり,歯髄の感染の疑いが強かったために抜髄.頬側近心根の第4根管の根管口が慢性う蝕のために,エンド三角によって塞がれていた.図2b 髄室開拡と根管口明示に使うバー.左:♯1557 カーバイトバー.中央:メルファー社 エンドゼックリアバー.右:8RC ダイヤモンドバー.根管口明示には,エンドゼックリアバーを使う.刃の形状は外科処置に使うゼックリアバーに類似するが,「エンドゼックリアバー」は刃長が短い.図2c 切削できないように加工してあるエンドゼックリアバーの先端を,MB1(近心頬側根の頬側根管)根管口から,MB2(近心頬側根の口蓋側根管)根管口に向けて,イスムスに沿わせるように形成を進め,ファイルの挿入を阻止しているエンド三角を安全・確実に除去する.図4b アクセスオープンを確実にしたので,容易に根尖まで根管形成ができ,根尖孔までしっかりと根充が完了した. 図4a 同一患者の₇も前述した₇と同様,遠心部の根管口付近に根管充填材が少しだけ入っている状況であった.6の抜髄症例(図2)慢性う蝕があり,髄室内の顕著な石灰化を認めた症例(図3,4)2根2根管の症例(図5)
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