仕組みから理解する! パノラマX線写真1-6Author: 渥美克幸22X線管球フィルム パノラマX線写真を用いることで歯および口腔顎顔面領域全体の状況把握が可能であり,スクリーニング目的で使用することが多い.しかし,鮮鋭度が低いこと,拡大率が部位により異なること,頸椎やX線不透過物による障害陰影が生じること,断層域を自由に設定できないことなどより,細かい診断には不向きだと考えている.とくに小臼歯部においては偏遠心投影になるため,隣接面が重複することが多いので注意が必要である.図1 細隙撮影(scanography)のイメージ.右側にあるフィルムに対して細隙(スリット)を通して移動しながら投影された情報が記録される.原理的にはコピーやスキャナと同じである.図2 人の顔のパノラマ(展開)写真を撮影する際のイメージ.まずさまざまな角度から顔写真を撮影し,黄枠内の短冊形の部分だけを切り出す.図3 切り出した短冊形の写真をつなげることで,パノラマ写真を合成することができる.しかし実際には,切り出すよりもはじめから短冊形の写真を撮影するほうが簡単なため,図1のようなスリットを用いている.図5 パノラマX線写真撮影時の様子.当院の装置(トロフィーパンプラス,ヨシダ)は立位が基本だが,モーションアーチファクトを防止するために,アームのポジションを下げて常に座位で用いている.注意点として,頸椎が前傾し障害陰影の原因となるため,患者が顎を突き出した状態(猫背)ではなく,背筋を伸ばした状態で位置づけることが挙げられる.なお,これは歯科用CBCTの撮影時にも有効だと思われる.図4a~c 断層撮影(tomography)の原理.a:このような対象物の,中心にある黄色い球を撮影する場合を考える.b:X線管球(左側)とフィルム(右側)を同時に動かすと,球の位置は常に変わらず中央に写るが,前後の箱は常に動いて写る.青い箱はフィルム上から下に,緑の箱はフィルム下から上に伸びたように撮影される.c:このように,前後の箱が大きくぼけることで,観察対象である黄色い球が浮き上がって撮影される.しかし,球自体もぼけてしまう(鮮鋭度が低い)のが欠点である.パノラマX線写真においては,この黄色い球が歯列に相当する.4a4b4cスリット口腔顎顔面領域全体のスクリーニングに“エンド” こだわりポイントパノラマX線写真撮影のしくみ(図1~4)パノラマX線写真撮影時の注意(図5~16)
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