歯列不正・不正咬合の患者が来院したら
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Part01 患者が描く歯列不正・不正咬合の治療のイメージ ―補綴か,矯正か―33Patient (First visit):女性,35歳(初診時).Chief complaints:前歯の歯並びが悪い(矯正したほうが良いのか悩んでいる).前歯が動く,破折した.Oral ndings:口腔清掃状態はやや不良.歯周病の進行は認められない.₂の歯冠が一部欠けている(充填の脱離によると考えられる). 軽度の歯列不正と不正咬合(₂の歯軸が舌側に倒れ,₂₃間との被蓋が逆転)が認められる.咬頭嵌合位への閉口運動時,₂と₂が早期接触して閉口運動を誘導し,つぎに₁₁が₂₁₁₂と接触し,歯軸が唇側に押し倒されながら咬頭嵌合位に入っていく状態であった.₁₁の歯軸は開口するともとの位置に戻り,動揺度は3(上下に動揺)を示した.エックス線画像からは上下顎前歯部には歯根膜腔の拡大と成長期からの咬合性外傷(ジグリングフォース)を疑わせる高度な歯根吸収が観察された.₂₁および₂には根尖の病変が観察された(Fig1a-d).Diagnosis and Treatment :患者は自分の歯並びが悪いことを若年期から気にしており,矯正治療の必要性を感じていたようである. 本症例のような場合は,若年時からの咬合管理を行いタイミングを計って矯正治療を行うのが第一選択であろう.しかし,現状は年齢が35歳であり,歯冠-歯根比が著しく不良であった(この原因は乳歯列から永久歯列完成期にかけて前歯部の機能的反対咬合が存在し,上下顎前歯にジグリングフォースが加わり歯根完成が妨げられ短根化をまねいたと推測される).矯正治療にて歯列不正・不正咬合を改善しても,上顎前歯自体の予後が著しく不良と考えられたため,補綴的処置を選択した.具体的には,₂₁₁₂の抜歯,₂₂へのインプラント埋入による₁₁のインプラントブリッジを計画し,患者からもインフォームドコンセントが得られた(Fig2a-d~Fig 6a,b).Fig1a-d 初診時の口腔内の状態.開口運動時に₁₁は大きく動揺し,歯軸が唇側に押し倒されながら咬合嵌合位に入っていく.上下顎前歯部の咬合接触が緊密である.エックス線画像からは上下顎前歯部の歯根膜腔の拡大と咬合性外傷を疑わせる高度な歯根吸収が観察された.₄₂₁₂には根尖の病変を認める.欠損はなく左右臼歯部の咬合支持も十分に得られている.acbdCase Presentation 04患者は矯正治療が必要と考えていたが,エックス線画像検査の結果から矯正治療は困難と判断しインプラントを用いた補綴的処置を選択した症例初診時

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