歯科医師・歯科技工士のための最新ラミネートベニア ─現在の到達点─
5/8

110Chapter 3 ラミネートベニアテクニック ラボサイド編2)石膏原模型のシリコーン印象 基本的にシリコーン印象材はパテタイプとインジェクションタイプの2種類を使う。パテタイプはいわばインジェクションタイプで採得する精密印象の精度を維持するものと考える。インジェクションタイプのスペースを確保するために原模型(とくに支台歯部分)にはスペーサーが必要になる。筆者は水で濡らしたティッシュペーパーを1~1.5mmの厚さになるように折り重ねて使用している(図5)。パラフィンワックスなどクッション性に乏しいものは、形成された支台歯の切端が薄い場合に破損のリスクがあるため使用しない。 図6はパテタイプ(JMシリコン,ニッシン,モリタ)を使用して一次印象を採っているところである。軟弱ではない金属製の既製トレーを台座代わりに用いている。このとき、薄手のポリエチレンフィルムを金属トレー側に敷いておく(理由は後述)。また、ロッキングアームとダイトレーにパテタイプが必ず密接するよう注意する。隙間があると、のちに使用するインジェクションタイプが流出してしっかり圧がかからないため、変形した印象になるおそれがある。 パテタイプが完全に硬化したら、ティッシュペーパーを取り除き、インジェクションタイプ(JMシリコン カートリッジ,ニッシン,モリタ)にて精密印象を行う。原模型の石膏表面にはコンタミネーションがないように湿らせる程度のワックスパターン分離材を塗布し(図7)、手指で歯頚部から切端に向けてインジェクションタイプを塗り付ける(図8)。次いで、あらかじめインジェクションタイプを満たしたパテタイプのシリコーン印象をセッティングする。このとき、むやみに過大な力を加えて押し続けないことが肝要である(図9)。3)耐火模型材の注入 耐火模型材は、使用するポーセレンと熱膨張率が合致したものを用いる。混液比および練和時間はメーカーの指示に従う。耐火模型材の注入に先立ち、残存歯隣接石膏面には耐火模型材との分離効果を図るためにワセリンを塗布し(図10)、インジェクションタイプの表面には界面活性剤を噴霧しておく(図11)と気泡が入りづらい。石膏原模型のシリコーン印象図5 インジェクションタイプのシリコーン印象材が注入されるスペーサーとして、濡れたティッシュペーパーを使う。適度なクッション性があり、先鋭な支台歯切端部の破損がない。図6 パテタイプのシリコーン印象材と金属製トレーの間に薄いポリエチレンフィルムを介在して、一次印象を行う。図7 原模型の表面にごく薄くワックスパターンセップ(ノリタケ ワックスセップ,クラレノリタケデンタル,モリタ)を塗布する。石膏表面にシリコーン印象材が付着することを未然に防ぐ。図8 指を使って、歯頚部から切端方向にインジェクションタイプのシリコーン印象材を塗り付ける。図9 パテタイプシリコーン印象の内側にあらかじめインジェクションタイプのシリコーン印象材を満たして軽く圧接する。このとき強く押し続けないことが重要で、図のように模型の重さがかかるだけで十分である。89

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る