Murakami et al.026周炎の重要な一次予防であり,歯周炎再発の二次予防である5,6.方法 本総説は,プラークによって引き起こされる歯肉の状態に関する1999年の分類を更新し,改定するものである5.システマティック・レビュー,ナラティブ・レビュー,および1999年以降に発表された原著論文において, “Gingival diseases” [MeSH], “Gingivitis” [MeSH]に加え “Microbiota” [MeSH], “Gonadal Steroid Hormones” [MeSH], “Hyperglycemia” [MeSH], “Dental Prosthesis” [MeSH]などの関連するMeSH用語を含む文献をPubMedにて探索した.また,マニュアル検索にて,さらなる主要研究の確認を行った.なお,非プラーク性歯肉病変に関する研究は除外した.知見と考察 1999年の分類システムで使用された参考文献5を見直し,再検討にふさわしい文献を選択した.さらに,Medlineにて“歯肉炎”に関連する論文を収集した.収集した文献は著者による討議に基づいて最終的に選択し,グループの共同議長の提言により追加した.プラーク性歯肉炎 プラーク性歯肉炎は,歯肉縁および歯肉縁下に蓄積したプラークによって引き起こされる炎症反応である6.歯の喪失の直接的な原因ではないものの,歯肉炎を管理することは歯周炎の一次予防である7.疫学データにより,プラーク性歯肉炎は有歯者の全年代で認められることが判明し8-14,プラーク性歯肉炎は歯周病のもっとも頻度の高い形態であると考えられている15(表1).健康な歯肉の状態からプラーク性歯肉炎への初期の変化は,臨床的な検知が難しいことがある16.そのため,生理学的炎症と病理学的炎症との臨床的な線引きに関する重大な議論が起こっている.プラーク性歯肉炎は進行するにつれ,臨床所見や症状が顕著になる.プラーク性歯肉炎は歯肉縁に始まり,歯肉全体に広がりうる.患者は,ブラッシング時の出血や歯茎の出血,歯肉の腫脹や発赤,進行した際に起こる口臭などから症状に気づく場合がある17. 臨床所見や症状の強さには個人差があり18,歯列の部位によっても異なる.プラーク性歯肉炎に共通する臨床所見として,紅斑,浮腫,出血,疼痛,肥大などがある7,19.重症度は,歯や歯根の構造,修復や歯内の検討事項,その他の歯に関連する因子が影響することがある20(表2).プラーク性歯肉炎患者におけるエックス線解析やプロービング・アタッチメントレベルは,通常,支持組織の喪失を認めない.病理組織学的変化には,乳頭間突起の歯肉結合組織中への進展,接図1 歯周炎の発症機序における宿主‐微生物相互作用の現行モデル.本モデルにおいては,宿主応答は初期のディスバイオシス(歯肉炎)を誘発する.バイオフィルムが破壊も除去もされなければ,明白なディスバイオシスにより慢性難治性破壊性炎症が起こり,永続する.DAMPs:傷害関連分子パターン,fMLP:N-ホルミルメチオニル-ロイシル-フェニルアラニン,GCF:歯肉溝滲出液,LPS:リポ多糖類,MMPs:マトリックスメタロプロテアーゼ,PMNs:多形核好中球.本図は参考文献106より抜粋.PMNsfMLP臨床的に健康PMNs ++LPSPMNs +++LPSヘム↑GCF習慣リスクファクター:有環境リスクファクター:明白習慣リスクファクター:無遺伝的リスクファクター:無後成的影響:明白ではない遺伝的リスクファクター:有後成的影響:明白環境リスクファクター:無Chapple 2015均整の取れた宿主応答均整の取れた宿主応答不均衡な宿主応答(過剰な炎症)補体抗原細菌DNA歯肉炎歯周炎抗体抗体T,B細胞抗原病原因子形質細胞抗原ジンジパインサイトカインDAMPsプロスタノイドMMPs酸化ストレスバイオマス:少炎症消退:急速バイオマス:多バイオマス:多慢性難治性炎症炎症消退:慢性化炎症消退:不全結合組織と骨の傷害健康促進バイオフィルム=シンバイオシス初期のディスバイオシス(クオラムセンシングバクテリア)明白なディスバイオシス(病原性バイオフィルム)
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