増補新版 インプラントセラピー
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24613 | 側方アプローチによる上顎洞底挙上術は円周運動になる。180度のバックアングル剥離子を用いることにより、骨窓に隣接した上顎洞側壁に到達するのがより簡単になる。DASKテクニックでの上顎洞粘膜穿孔率はピエゾ手術の5.6%と同等である41。特定の症例では、以前の抜歯や骨窓形成による上顎洞側壁の裂開、大きな動脈の存在、あるいは前後方向に走る隔壁といった解剖学的要因により、側方アプローチによる上顎洞への到達が困難な可能性がある。他の上顎洞への到達を障害するものとしては、以前に充填したが上顎洞内側壁まで達せず、インプラント埋入予定部位に空隙を残してしまった移植材料が考えられる。こういった症例では、歯槽頂側や口蓋側に骨窓を形成する方が良いかもしれない。歯槽頂側の骨窓以前の抜歯や失敗した側方アプローチによる骨窓形成痕により上顎洞側壁に骨欠損がある場合、その周囲では骨膜と上顎洞粘膜が癒着している(図13-17)。よって骨欠損部では部分層弁を作成する必要があり上顎洞粘膜挙上が困難となる。同様に、歯槽頂部に骨欠損を認める症例があり、上顎洞粘膜と歯槽頂部の粘膜が癒着しているために、側方アプローチでの上顎洞粘膜挙上が困難となる。大きな直径の後上歯槽動脈の取り扱いもこの歯槽頂アプローチにより回避できる(図13-18)。この方法の欠点として、歯槽頂における部分層弁が裂開し、バリアメンブレンと移植材料が露出し感染のリスクが生じることが挙げられる。口蓋側の骨窓他にも側方アプローチの選択が適切でない状況がある。以前に側方アプローチで上顎洞底から内側壁に渡る上顎洞粘膜の挙上に失敗した場合を考えてみる。インプラントを埋入するのに不十分な高さの内側骨と非常に厚い上顎洞側壁が残された状況である(図13-19)。口蓋からのアプローチは上顎洞内側の空隙へ直達できるため、前回の上顎洞底挙上術の際に充填した移植材料や新生骨を除去する必要がない42。別の解決策としては、可能な部位にインプラント埋入して、角度付きアバットメントで傾斜を修正する(図13-20)。口蓋アプローチの必要性がある他の状況としては、高く長い前後方向の隔壁が存在する場合である。隔壁の位置によっては、インプラントを埋入するために上顎洞内側の充填されていない空間のみに移植を必要とする場合もある。その内側の空間に到達するために側方アプローチを行う場合、「骨窓内の骨窓」の作成が必要となるだろう。過去の報告では、口蓋側アプローチにおけるインプラントの生存率と上顎洞粘膜の穿孔率(19%)は、側方アプローチのものと同様であった。頬側に切開線を設けたグループよりも、術後の炎症が少なく口蓋側軟組織の瘢痕も少ない43,44。口蓋アプローチを検討する場合、CT画像によって残存歯槽骨と口蓋の天井との間で上顎洞への十分な垂直的アクセスを事前に確認しなければならない。これらの所見が認められれば、一般的には、広範囲の含気化と口蓋の高い天井を有した症例である。CTによる研究では、この口蓋アプローチは一般図13-15 (a)直径8 mmのDASKドリルを使用。(b)上顎洞側壁を菲薄化した。(c)骨窓の形成が終了。(d)ドーム状の第一挙上剥離子。(e)ストレート型挙上剥離子の使用。(f)上顎洞側壁の挙上が終了。abcdef

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