基礎と臨床がつながる歯周解剖
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Chapter2生体の組織構造と外科術式の関連図2-11 口蓋部より全層弁にて採取した結合組織図2-12 口蓋部結合組織の組織構成の違い(ヒト標本をH-E染色した光学顕微鏡像)血管や脂肪組織が多く存在する。移植後の収縮が大きい。小臼歯部に多くみられる組織。横方向、縦方向に走る高密度なコラーゲン線維が存在し、血管が少ない。移植後の収縮が少なく結合組織移植術に適している。大臼歯部や上顎結節部に多い組織。横走するコラーゲン線維縦走するコラーゲン線維密性線維性結合組織(粘膜固有層)b血管脂肪組織血管血管粗性結合組織a骨と接していた部位(粘膜骨膜)粗性結合組織骨側b密性線維性結合組織(粘膜固有層)脂肪組織上皮側a②歯肉には骨膜がない 歯肉の最大の特徴は角化上皮を有することと述べたが、上皮下結合組織においても大きな特徴がある。 成書には、「歯槽粘膜部を構成する要素は非角化上皮、粘膜固有層、粘膜下組織、骨膜、骨」、「歯肉の角化上皮の下層は粘膜下組織を欠き、密な線維性結合組織である粘膜固有層がシャーピー線維によって直接骨と結合している」と記されている。この「直接骨と結合している」点が重要で、粘膜固有層が骨と直接結合しているならばこの領域に骨膜は存在しないと解釈できる。実際、P.41の図2-5に示した筋や靭帯の付着部位(下顎骨の咬筋粗面)は、加わる力に抵抗するように多くのシャーピー線維によって強固に結合していることから、骨膜は不明瞭になっている。 歯肉も咀嚼に抵抗するために結合組織が強固に骨と結合している。粘膜におけるこの状態は「粘膜骨膜」と呼ばれ通常の骨膜とは区別されている。つまり、歯肉部は全身の骨を覆う一般的な骨膜(骨形成層と線維層の2層構造)とは異なる特殊な骨膜構造をしているとも、一般的な組織構造をした骨膜を持たないとも表現表層面からの観察:上皮を取り除いた移植片の表面は粘膜固有層が観察できる。黄色く見える領域は脂肪層である。裏層面からの観察:口蓋からの採取の場合、骨と接するのは骨膜ではなく粘膜骨膜である。ピンク色に見えるのは粗性結合組織。45

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