その皮膚疾患 歯科治療で治るかも
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小林里実/長谷川光晴聖母病院 皮膚科/ぜんり歯科内科クリニック3.歯性病巣感染による掌蹠膿疱症と胸肋鎖関節炎症例患者:40代,男性.現病歴:初診の半年前より手足に膿疱が出没,多発するようになった.瘙痒あり.近医にて掌蹠膿疱症と診断され,ステロイド外用薬,活性化ビタミンD3外用薬を行うも皮疹は徐々に拡大傾向となり,自身で高用量ビオチン,ミヤBM,ビタミンCの服用を試みたが効果なく,当科を受診した. なお,検査や歯科受診を指示し2週間後に再診した際,前胸壁に激痛を伴う浮腫を認め,ベッドに横になれない,ソファで眠るが疼痛で何度も目が覚める,朝動き出すときにもっとも激しい痛みに襲われるなどを訴えた.既往歴:高血圧,肝機能障害,喘息.初診時所見:両手掌と手指腹,両足底と足縁に膿疱と褐色が散在し,鱗屑を伴っていた(図1a,b).鑑別診断:掌蹠膿疱症,汗疱,汗疱性湿疹,足白癬,金属アレルギーを含む接触皮膚炎.掌蹠膿疱症の発症契機に関する問診結果・扁桃炎,副鼻腔炎の既往はなく,先行する上気道炎もなかった.・喫煙歴あり.20本×3年,20歳以降は禁煙している.・最終歯科受診は10年前であった.・腸症状:以前より下痢しやすい.悪化因子となりうる併存症に関する検査結果および関節症状・糖尿病なし.・自己免疫性甲状腺炎なし.・前胸部に強い痛みを伴う腫脹を認めた(図2).前胸部MRI検査にて,胸骨柄から右第一肋骨,胸骨結合側に,T1強調画像で低信号,脂肪抑制T2強調画像で高信号を呈する骨髄および周囲軟部組織の浮腫を認めた(図3).図1a,b 初診時の状態.両手掌と手指腹,両足底と足縁に膿疱と褐色が散在し,鱗屑を伴っている.図2 初診2週後の前胸部の状態.強い痛みを伴う前胸壁の腫脹を認める.右鎖骨が追えなくなっており,その下方の第一肋骨胸骨境界部にかけて著明な浮腫がみられる.図3 前胸壁のMRI脂肪抑制T2強調画像.胸骨柄から右第一肋骨にかけて,骨髄と周囲軟部組織の浮腫による高信号を認める.ab23114

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