その皮膚疾患 歯科治療で治るかも
4/6

77歯性感染症はさまざまな皮膚疾患を引き起こす可能性がある 歯性病巣感染によって生じる皮膚疾患として掌蹠膿疱症はよく知られているが,他にも歯性病巣感染から誘発された症例報告がある疾患は多岐にわたる.とくに歯性病巣感染との関連が強いのは肉芽腫性口唇炎であり,扁桃なども含めた病巣感染との関連が強いのが掌蹠膿疱症である1.これらの疾患では治療の初めから歯性病巣感染の有無を検索し,歯科医の立場で必要があれば積極的に治療を行うことが望ましい.たとえば,抜歯の適応ではあるが,患者の強い希望があれば保存的治療を選択するような症例であっても,皮膚疾患との関連が疑われる病巣感染治療では積極的に抜歯を行うように患者を説得する必要がある.また,一部の皮膚疾患では,通常は病巣感染の検索を優先的に行わずとも治療が成功するが,時に合併する病巣感染の治療で軽快する症例がある.そのような疾患として蕁麻疹,慢性痒疹,結節性紅斑(図1),IgA血管炎(図2),特発性色素性紫斑などが挙げられる.これらの疾患では,まず通常の皮膚科治療を行い,治療がうまくいかないときに積極的に歯性病巣感染も一つの原因として検索して必要があれば治療を行う.歯性病巣感染の治療にあたって皮膚科医,歯科医がともに知っておくべきこと 皮膚疾患患者の歯性病巣感染治療にあたって皮膚科医,歯科医が知っておくべきことがある.第一に上記の皮膚疾患はすべて多因性であり,歯性病巣感染が原因のすべてではない.たとえ根尖病巣や歯周病が見つかり適切な治療を行っても,二次疾患の皮膚疾患は必ずしも軽快するとは限らない.われわれの掌蹠膿疱症患者の後向き研究では,歯性病巣感染治療が有効なのは63%程度である.たとえば病巣感染も歯性病巣感染だけでなく,歯性病巣感染治療が無効で扁摘(扁桃摘出術)が著効する症例がある.われわれの報告では扁摘した6例全例で軽快している2.高橋愼一東京歯科大学市川総合病院 皮膚科う蝕根尖病巣ac4.皮膚科医師とのかかわり:歯科疾患と関連する皮膚疾患に  注意―院内の皮膚科と歯科の連携から―b図1a~c 抜歯後に治癒した結節性紅斑(高橋愼一.歯性病巣感染と皮膚疾患. 東京歯医師会誌 2004;52(4):213‐220より引用改変).a:治療前.b:治療後.c:治療前のパノラマエックス線写真.Chapter4 歯性病巣感染治療7777

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る