その皮膚疾患 歯科治療で治るかも
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4.掌蹠膿疱症 掌蹠膿疱症とは慢性に掌蹠に小膿疱の出没を繰り返し,その後鱗屑を伴う紅斑局面を形成する疾患で,一部の症例では胸鎖関節などに関節痛を生じ,QOLが著しく低下する疾患である.症例によっては後述する異汗性湿疹との鑑別が困難で,異汗性湿疹を掌蹠膿疱症として紹介されることがある. われわれの施設では掌蹠膿疱症の主要な病因は病巣感染であるという考えに基づき,2004年から2011年までに当院の皮膚科および歯科口腔外科を受診した85名の掌蹠膿疱症患者について,まずすべての患者に歯性病巣感染の検索を行った. それによると,74例(87%)の患者に歯性病巣が認められ,そのうちの70例にまず歯性病巣の治療を行った.さらにそのうちの44例(63%)の患者に皮疹の改善が認められた.パッチテスト陽性率は50%程度で高かったが,歯科治療無効の9例のうち歯科金属除去で改善したのは3例(33%)のみであった.逆に扁桃摘出術を施行した6例全例で皮疹は改善ないし治癒した.このように,掌蹠膿疱症では歯科金属アレルギーの関与も報告されているが,歯性病巣を含む病巣感染が主要な発症要因である6.【症例1】患者:33歳,女性.主訴:手掌に小膿疱,鱗屑を伴う紅斑と全顎的に中等度の歯周炎.治療経過:プロービングデプスが4mm以上の部位を歯肉縁下処置の対象とし,スケーリング・ルートプレーニングを行った.歯周病治療開始4か月で皮疹の軽快傾向が観察され,1年4か月で治癒した(図1).図1a 手掌に小膿疱,鱗屑を伴う紅斑.図1a〜d 歯周病治療により治癒した掌蹠膿疱症.図1c 歯周治療1年4か月後,皮疹消退.図1b 歯周治療開始前の前歯部と歯肉の状態.図1d 歯周治療1年4か月後の前歯部と歯肉の状態.30

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