FGF-2と歯周組織再生療法
6/6

FIG 6a, b 術後9か月目に術部のリエントリーを行ったところ(b),手術時に認められた頬側面の重度の骨欠損は再生した歯槽骨で覆われているのが確認できた.エックス線写真上で₆部に再生した歯槽骨に変化はなく,異常所見も認められていない(FIG 7).また,リグロス®投与による口腔局所や全身における副作用も認められていない.この₆部の保存により,患者は義歯を装着することなく,高齢になった現在でも日常の食事が自身の歯で普通にできていることに非常に満足されている.臨床実感と考察①EMDとの比較 今回提示した症例は,リグロス®の第Ⅱ相前期臨床試験で行われた症例である.本症例では,リグロス®を投与した₆部のほうが,エナメル基質タンパクを投与した₆部よりも,歯槽骨再生において効果が認められた. リグロス®による再生療法とエナメル基質タンパクを用いた歯周組織再生療法との有効性の比較に関して,動物実験の結果で,0.3%FGF-2(リグロス®)のほうが統計学的に有意に歯槽骨の再生率が高いとの報告がある1.実際の臨床で,エナメル基質タンパクでは術後12か月で50.5%の骨の回復率を示しており2,リグロス®による臨床試験では,6か月で35.6%,9か月で58.6%であった3ことから,歯槽骨の回復率や治癒の早さに関して,これまでの再生療法と同等以上の効果があることも指摘されている.②骨補填材は必要だったか ₆部は,₆部と比較して骨欠損形態がカップ状でなかったことからグラインディングによる咬合性外傷の影響は少なく,2壁性骨欠損であったことから,骨補填材との併用がなくてもリグロス®単独で再生が認められたものと推測される. 歯周組織が正常に回復し,定期的メインテナンスで細菌と咬合のコントロールを図ることで再発の予防はできており,歯周状態は長期にわたって維持されている.参考文献1.Shirakata Y, Taniyama K, Yoshimoto T, Miyamoto M, Takeuchi N, Matsuyama T, Noguchi K:Regenerative eect of basic broblast growth factor on periodontal healing in two-wall intrabony defects in dogs. J Clin Periodontol 2010;37:374‐381.2.Windisch P, Sculean A, Klein F, Tóth V, Gera I, Reich E, Eickholz P. Comparison of clinical, radiographic, and histometric measure-ments following treatment with guided tissue regeneration or enamel matrix proteins in human periodontal defects. J Periodon-tol 2002;73:409‐417.3.Kitamura M, Nakashima K, Kowashi Y, Fujii T, Shimauchi H, Sa-sano T, Furuuchi T, Fukuda M, Noguchi T, Shibutani T, Iwayama Y, Takashiba S, Kurihara H, Ninomiya M, Kido J, Hamachi T, Maeda K, Hara Y, Izumi Y, Hirofumi T, Imai E, Omae M, Wata-nuki M, Murakami S. Periodontal tissue regeneration using bro-blast growth factor-2:randomized controlled phase Ⅱ clinical trial. PLoS ONE 2008;3:e2611.ab手術時術後9か月90PART 3 リグロス®の臨床例と術後経過

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る