FGF-2と歯周組織再生療法
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 リグロス®を用いたフラップ手術の対象部位には,骨欠損が大きく大量の肉芽組織が存在する部位が含まれることが多く,フラップの形成や肉芽組織の除去が難しく,手術が長時間に及ぶケースも少なくない.そして,いったん麻酔効果の減弱がみられると,麻酔薬の追加などによる疼痛のコントロールは非常に困難である.そのため,リグロス®を用いたフラップ手術では,手術の初期段階で確実な局所麻酔を行い,術中の疼痛を抑制することが肝要である. 具体的には,局所麻酔はフラップを形成する術野からフラップデザイン リグロス®を用いたフラップ手術における歯肉弁(フラップ)も,通常のフラップ手術と同様の要件を満たす必要がある(TABLE 1).①必要な術野 形成されたフラップは術野の視野の確保と器具のアクセスが十分得られることが必要であるが,必要以上に術野を拡大しないことが求められる.②減張切開 術後に手術部位をフラップで確実に閉鎖することが必須であることから,必要に応じて減張切開を加える.③縦切開 術野へのアクセスを容易にするために縦切開を加える場合には,血管の走行を考慮し,フラップの血液循環を障害しない部位に縦切開を行うことに加え,歯冠乳頭部や歯根の唇・頬側および舌側の中央部を避けて隅角部に縦切開を行い,術後の歯肉の治癒不全や裂開を可及的に回避する(FIG 4).手術部位の遠心部での縦切開は歯肉弁の血流を阻害する可能性が高くなるので,できるだけ1歯程度拡大した範囲の歯肉頬(齦頬)移行部に行い,術中の出血や疼痛を抑制するため,リグロス®の投与を予定している骨欠損が大きな部位には注入する局所麻酔薬量を増やしたり,骨欠損部の肉芽組織に直接麻酔薬を注入することが望ましい. また,下顎大臼歯部にリグロス®を用いたフラップ手術を行う場合,同部位の解剖学的特徴から浸潤麻酔が奏功しにくいことから,下顎孔伝達麻酔による疼痛のコントロールを考慮する.局所麻酔6-1歯肉の切開6-2避けることが望ましい. そして,手術部位の両側に縦切開を行う場合は,歯肉弁の血流を阻害することがないように,縦切開間の距離を大きくすることや,歯肉弁の基底部を広くするなどの対応を考慮する.④低侵襲に リグロス®を用いたフラップ手術では,角化歯肉を可及的に保存し,術後の血行回復に配慮した,低侵襲なフラップデザインとする.TABLE 1 フラップ形成のポイント.1 術野の視野の確保と器具のアクセスが得られること2 必要以上に術野を拡大しないこと3 創傷部位をフラップで確実に閉鎖できること4 フラップの血液循環を障害しないこと5 角化歯肉を可及的に保存すること6 審美性を損なわないこと52PART 2 リグロス®の臨床・テクニック

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