イラストで学ぶ エンドのバイオロジー
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48第5章 治癒の仕組み 発生学・組織学的にみた治癒●「未分化」とは? ここで,ちょっと言葉の確認をしましょう.「未分化間葉細胞」,よく耳にする言葉ですが,何となくニュアンスはわかっていても,実際そのものが何なのかというのは,意外と知られていないことが多いように思います.「う分う化う」うというのは言わば「い専い門い化い」いです.たとえば文系に進んだ学生がいたとします.文系ですから,もし物理を選択しなければその教科書は開くこともありません.逆に選択した教科だけはどんどん学習が進んでエキスパートになっていく.そんななか,急に物理の問題を出されても答えに窮するのと同じで,筋肉になるべき細胞が急に骨になれといわれても,蓄えている情報がまったく違いますから,なれっこないのです(図5).もしなろうとするならば,1年生に戻ってはじめから勉強し直しです.一般に高い等いない生い物いほいどい組い織い器い官いのい分い化いがい進いんいでいおいりい,い専い門い分い野いがい固い定いさいれいていいいまいすい.いつまりヒトのような高等な生物の再生能力は低いといえます.反対にプラナリア(図6)のように再生能力の高い生物は,原始的であまり分化していないか,していても容易に脱分化し(分化していたものが未分化な状態にもどること),その場に必要とされている細胞になることができるのです.未分化間葉細胞とは?●「間葉」とは? それでは「間葉細胞」とはいったいどんな細胞でしょうか? 発生学的には図7に示すような定義がなされています.結果として結合組織と同等の意味で使われることが多いですが,「間葉」というのは,名称というより“状態”と捉えたほうがよいかもしれません(「間葉」というのは永久普遍のものではなく,発生や再生修復過程において上皮様に転換することもあるからです). 間葉は“状態”であるだけに,そのフットワークの軽さは抜群です.たとえば上う皮うが頑固で決められた仕事以外受け付けない,「い融い通いのい利いかいないいい堅い物い社い員い」いだとすると,間う葉うはその場の空気を読んで自分の求められている仕事をこなす「い空い気いのい読いめいるい若い手い社い員い」いといったところでしょうか.つまり,「う未う分う化う間う葉う細う胞う」うというのは(間葉自体未分化なのですが……),何い者いにいもいないれいるい無い限いのい可い能い性いをい秘いめいたい細い胞い集い団いということになります. こうやって考えてみると,いわゆる「い再い生いにい必い要いない3い要い素い」いといいいういのいはい,い実いはい「い発い生いにい必い要いない3い要い素い」いだいっいたいのいだいといいいういこいといがいわいかいるいとい思いいいまいすい(図8).生体適合性をもつ足場,誘導能をもつシグナル分子,再生能をもつ選ばれた細胞,これらが適切な部位で正確な時期に複雑に関与し合って成り立っていく再生とは,まさに発生過程を忠実に再現した“奇跡”であるといえるのではないでしょうか.よし、国語の勉強はこれで完璧だ!急に物理の問題を出されても……≒よし、君は骨になってくれ!急に言われても無理です……図5 細胞の「分化」はすなわち「専門化」

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