イラストで学ぶ エンドのバイオロジー
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05推薦のことば 一般臨床家は歯内療法に多くの不安と悩みを抱えている現状がある.その理由の一つとしては根管内を,可及的に早く効率的に機械的に拡大し,簡便にエックス線不透過性の物でより多く封鎖することに主眼を置いて行った結果だと私は思う.そのためのテクニック論,材料論そしてマイクロを含む設備紹介等のセミナー・講演会・講習会が数多く催されている. しかし,感染根管・根尖病変・根尖病巣・歯根嚢胞と呼ばれるものはすべて根尖性歯周組織炎であり,このほとんどは医原性疾患であるということを再認識しない限りこの悩みは解決しないだろう.もしわれわれ臨床家が学生時代に学んだバイオロジー(発生学・組織学・生理学・病理学)や解剖学を念頭に置いて歯内療法を行っていたらこの結果は変わっていただろう. 特にわれわれ臨床家がもっとも不得手とするこのバイオロジーを大変わかりやすく解説・表現し,歯内療法を行ううえで必要不可欠であることを再認識させてくれるこの書は歴史に残る名著だと思う.この一冊が数多くの臨床家のバイブルとなり,ひとりでも多くの臨床家の悩みを解決する糸口になってくれることを切に願う. 12年前私のセミナー後,「自分の学んできた病理と臨床が一致した」と大喜びしていた姿が今でも私の脳裏に焼き付いている.そして今それが形となって書籍となって出版されることに心から賛辞と感謝の言葉を贈りたい. 吹譯景子氏によるこの著は,組織学の基礎をわかりやすい言葉で表現し,身近なたとえ話に丁寧なイラストをふんだんに使って解説しており,学生から開業医まで,幅広い方々に理解しやすい書籍である.私はエンドの分野において,バイオロジーをここまで詳細に噛み砕いて解説している書籍に未だかつて出逢ったことがない.また,キーワードや重要な解説文には色分けされたアンダーラインやマーキングが付与されており,とても見やすく細部にまで配慮されており,常に読者目線でこの著を書いていることが読み取れる. 吹譯景子氏はご主人とともに歯科診療所を開業している歯科医師でもあり一児の母親でもある.この書籍からは,常に患者の病態を把握しながら患者の生体内で今何が起こっているのかを把握し,どうしてこうなったのかという原因の究明を怠らず,日々臨床を行っている著者の姿勢を垣間見ることができる. また,吹譯氏の臨床への情熱のみならず患者への優しさを感じることのできる本書は,学術書であるにもかかわらず,なぜか読者をほっこりさせる不思議な書物であり,是非多くの方々にご一読頂きたいと切に願う.林 美穂福岡県福岡市開業元 永三福岡県福岡市開業

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