イラストで学ぶ エンドのバイオロジー
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03はじめに エンドの治療において,よく患者さんに聞かれることがあります. 『なぜ神経がないのに痛いのですか?』 『あと何回で治りますか?』 『根の先が炎症を起こしているからですよ』 『個人差があるのではっきりとは言えませんが,症状がなくなるまで経過をみましょう』 それは答えになっているでしょうか? そもそも炎症とは痛いのでしょうか? 何をもって治ったと言えるのでしょうか? 患者さんは不安です.常に納得いく説明や明確なゴールを求めています. でも,術者も不安です.なぜなら,経過が目に見えない,手にとってわからないからです. 経験値が上がれば,自分の中で積み上げたデータに基づいて,説明や治療を進めることができるでしょう. しかし,経験値の少ない若い先生方は,ついHow-toや『経過を見ましょう』に頼ってしまいがちです. 私たちが相手にしているのは,生体です. 相手のことを知らなければ,歩み寄ることはとても難しいですが,相手に興味を抱き,親しみを持てば,ぐっと距離は縮まるはずです. 『今そこで何が起こっているのか』『何のためにその処置を行っているのか』 大切なのは,常にイメージし,生体の反応と照らし合わせながら治療をすること.そうすれば,生体とメッセージのキャッチボールができるようになってくると思います. 患者さんに病状をわかりやすく伝え,理解していただき,治癒に向かって役割分担をする. そのために生体のメカニズムを知り,それを味方につけ,最大限に引き出す努力をする. そんな若い先生方のお手伝いができれば良いな,と思っています.2020年5月吹譯景子

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