骨増生テクニック&骨補填材料国内トレンド
5/8

巻頭特別企画 骨増生テクニック&骨補填材料2020タイトル25字程度非吸収性HA+吸収性β-TCP×クレスタルアプローチ-既存骨0mmへの挑戦-水口稔之1術式のポイント1)術式選択 術式選択のポイントは2つあり、①クレスタルアプローチかラテラルアプローチかである②インプラントの同時埋入か待時埋入かである ①については、本症例では口腔粘膜と上顎洞粘膜の間に骨がないため粘膜どうしが癒着しており、その剥離が容易な術式がより良いと思われる。そのため、今回はクレスタルアプローチを選択した。 ②のクレスタルアプローチにおいて、サイナス内の骨増生に成功したとしても参考症例1(39ページ)のようにインプラント埋入時には、増生骨の萎縮が予想される。そのため、オッセオインテグレーションを期待せずにテントの柱のようにインプラントの同時埋入を行う方法を選択した。 実際の手技においては、切開線と剥離の考慮がポイントになる。切開線は、当然歯槽頂切開はできない。口蓋側寄りの切開を行い、15Cのメスを使用して慎重に口腔粘膜を歯槽頂レベルで剥離していき、フラップを形成する。その時、上顎洞粘膜には口腔粘膜が付着した状態になるが、なるべく口腔粘膜が少なくなるようにする。2)インフォームドコンセント このようなまったく既存骨がないような症例では、クレスタルアプローチにしてもラテラルアプローチにしてもエビデンスの高い手術は不可能であるため、もっとも重要視したのがインフォームドコンセントである。具体的には、下記などについて、可能性を提示し手術を行った。水口インプラントセンター理事長・歯学博士(1)バーティカルで行うがラテラルに変更の可能性を説明 手術方法は術中に変更する場合があり、あらかじめ患者の了承を得ることは必要である。(2)2ステージで行う可能性も説明 このような難症例であるため、手術回数が限られることには無理があり、最初に骨増生のみを行い、その後にインプラント埋入する可能性も説明が必要である。(3)上顎洞粘膜が損傷している可能性を説明 本症例のようにインプラント埋入部位に既存骨がない場合は上顎洞粘膜も大きく損傷していることが考えられる。その場合に上顎洞粘膜の回復処置およびインプラントの再度の埋入手術についての説明も必要になる。(4)上顎洞粘膜を損傷してしまう可能性を説明 これはすべてのインプラントのサイナス手術でインフォームドコンセントが必要であるが、手術中に上顎洞粘膜が損傷することが起こりうることが事前にわかっているため、患者にその後の現象や対応など必要な説明を行うべきである。(5)骨補填材料の漏れによる上顎洞炎の可能性を説明 後術に詳しく説明を行うが、サイナス手術においてトラブル時におけるサイナスの洗浄の知識は必要不可欠である。(6)期間の延長がある可能性を説明 これはすべての歯科治療において、必要なインフォームドコンセントである。人間を対象とした医療はその反応が異なり、同じ手技を行っても結果がことなることは、事前にわかっている。そのため、リカバリーの技法が必要であるが、期間などのある程度の患者の協力が必要になる。36

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る