巻頭特別企画 骨増生テクニック&骨補填材料2020ウシ由来HA+吸収性メンブレン×GBR-ソーセージテクニック変法を応用して-井汲憲治1術式のポイント 本症例における骨補填材料を用いた骨増生は以下の4つの様式に分けられる(図1、2)。1)上顎右側臼歯部の垂直的増生 著しい骨の破壊を原因となっていた₇₆を抜歯し、不良肉芽を十分に除去して4ヵ月間粘膜の治癒を待った。やや、口蓋側寄りに切開線を加えて骨面を露出させた。直径1mmドリルにて上顎骨に小孔を形成し骨補填材料の充填部位の骨内からの出血を確認した(図3)。吸収性コラーゲンのBio-Gide(Guistlich)膜を適当な大きさにトリミングして、まず口蓋側を骨にて3ヵ所固定した。次に、骨を5mm程高くなるようにBio-Oss(Guistlich)を充填してから膜にテンションがかかるように膜の頬側の辺縁を骨ネジにて3ヵ所固定した(図4、5)。頬側のフラップの骨膜に減張切開を加え、粘膜弁が骨増生部分を十分に被覆できることを確認した。次に、ゴアテックス縫合糸にて垂直マットレス縫合を行い、その間をバイオフィット縫合糸にて単純結紮縫合を行った(図6)。5ヵ月の治癒を待ってソケットリフト術を併用してインプラントを埋入した(図8、9)。2)上顎前歯部の水平的な骨幅の増加と維持 歯槽頂切開を行い、唇側骨面を十分に露出させてから、皮質骨に小孔を形成し骨内からの出血を確認した。続いてBio-Ossを必要量充填してBio-Gideにて被覆した。減張切開を唇側粘膜弁の骨膜に加えて、弁が緊張なく縫合できることを確認してから単純結紮にて縫合を行った(図10~12)。2骨補填材料を選択した理由 骨補填材料を選択する際に筆者は以下のことを重要視している。①材料の安全性と有効性が多くの論文で確認されている、②賦形性が高いと同時に顆粒の流動性が低く、位置的な安定性が大きい、③容易に吸収せずに緩徐な吸収性を示す、④自家骨を混和せずに単体での使用においても十分な効果が期待できる、⑤治癒後に過度に硬くならない(→インプラント窩の形成が容易)、等。 本症例においては、前述の4つの様式においても、すべて自家骨と混和せずにBio-Ossを単体にて使用し良好な治癒結果を得ている。しかし、母床骨に比べて骨増生量が大きな症例においては、積極的に下顎枝外斜線部位より骨を採取して、粉砕あるいはブロックとして骨移植を行っている。その際にはチタンメッシュと骨ネジを用いるが、移植骨をしっかりとメッシュで固定するという医療法人石倉歯科医院院長、東北大学歯学部臨床教授・博士(歯学)、 公益社団法人日本口腔インプラント学会理事3)₂のインプラント周囲の骨増生 インプラント埋入後に唇側に裂開型の骨欠損が存在したが、Cytoex膜をカバースクリューにて固定した後に、ボーンタックにて膜の辺縁を固定した。鋭匙の裏を用いて膜をやさしく変形させ骨補填する空間をつくり、そこにBio-Ossを充填し、ボーンタックを用いて顆粒の形態をしっかり保持できるように固定した(図13、14)。4)₆₇部のインプラント支持による垂直的骨増生 埋入したインプラントが非吸収性膜Cytoexを支持するように4mm程の垂直的骨増生を行った。膜下にBio-Ossを充填し、膜辺縁をボーンタックにて固定した。インプラントネック周辺にはしっかりとした再生骨が確認された(図15)。28
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