集まれ!訪問歯科衛生士ビギナーズ在宅口腔衛生管理スタートブック
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これから歯科訪問診療に携 プロローグ 「訪問診療」や「往診」、聞いたことはあるけれど、診療所で働く自分たちには関係のない領域だと思っていませんか? 超高齢社会を迎え、疾患のある高齢者の療養生活の場は病院から自宅へと移行し、在宅での療養生活を支えるために医療や福祉の面から在宅支援が行われています。この社会全体で介護を支えるためにできた社会保障制度が介護保険であり、行政や地域で暮らす市民も一緒に取り組む「地域包括ケアシステム」が各地域で盛んに行われています。 これらのしくみは、対象となる高齢者の自宅から日常生活圏域であるおおむね30分以内にある行政や医療、介護、福祉事業所が各サービスを提供することで高齢者の療養生活を支えようとするもので、「高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう地域の包括的な支援・サービス提供体制を構築するもの1)」とされ、支援される高齢者自身も「住み慣れた自分の町で住み続ける2)」という原点を持ち、地域の老人クラブや自治会で支え合う相互扶助の関係が大切となってきます。これは同時に在宅支援を行う医療や福祉にも言えることで、患者さんのためにも多職種連携という形でいざという時に助け合える仲間づくりが欠かせないのです。 ここで、皆さんの歯科医院にいらしている患者さんを思い出してみてください。通院は自転車や徒歩、あるいは車でおおむね30分以内の方がほとんどではないでしょうか。家族ぐるみで何十年も通院され、かかりつけ歯科医院として絶大な信頼を寄せている方もおられるでしょうね。そんな患者さんが通院できなくなり、自宅での療養生活を余儀なくされ、口腔の問題に悩まされ、「あの先生に歯を治してほしい」「いつもの歯科衛生士さんにケアしてほしい」と願うのは自然なことです。そうです、診療室の患者さんは未来の在宅療養患者さんかもしれないのです。社会のしくみは変わりました 患者さんからの依頼は、ある日突然来るかもしれません。「行ってあげたい気持ちはあるけど、訪問診療なんてしたことないし……」? いえいえ、歯科医院で培った経験は持ち出し可能なんです8

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