DIGITAL DENTISTRY YEARBOOK 2020
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29in vitroでの現在の口腔内スキャンシステムの全顎および部分歯列での印象の精確性緒言 口腔内スキャナー(IOS)を使用した歯列のデジタル化は、患者から直接デジタル歯科模型を取得するための実行可能な方法である。不可逆材料を使用した従来の印象法と比較して、デジタル印象法には印象の容易な再現性、モデルの直接視覚化、時間効率の向上、コンピューター支援設計/コンピューター支援製造(CAD/CAM)修復によるチェアサイドでの生産性向上の可能性などいくつかの利点がある1-5。口腔内スキャンはコーンビームCT(CBCT)スキャンや顔貌スキャンなどの他のデジタルデータとの融合オプションを使用して、デジタル歯科ワークフロー内でさらに使用できる6、7。口腔内スキャンに基づく三次元(3D)差解析オプションは、患者のモニタリングに関して大きな可能性を提供することが実証されている8、9。 デジタル印象の精確性が最近のいくつかの研究対象となっているという事実は、この分野での科学的証拠の必要性がまだあることを示している。1歯などの短スパン領域や、1/4顎や1/6顎などの部分歯列領域では、デジタル印象は従来の高精度素材での印象と同じ精度範囲内で採得できることが実証されている10-12。全顎などの長い領域では、IOSを改善して従来の印象の精度レベルに到達する必要があることが実証されている13-17。IOSを使用したデジタル印象の欠点も、無歯顎および多数インプラントの臨床症例の両方で報告されている18-20。 精確さは、真度と精度の2つの独立した要因によって定義される21。真度は、元の形状、つまりマスターベースモデルとデジタル化モデルを比較することによって得られるが、精度はデジタル化モデルのグループ内比較によって得られる21。歯科修復装置の十分な適合とモデルの正確な仮想咬合を保証するために、歯科モデルの高い精確さが必要とされる22、23。文献にはIOSの精度を評価するためのさまざまな方法が記載されている。修復装置の適合性の評価などの間接的な方法が記載されている24、25。歯列形状の線形測定またはベストフィット後の3D表面比較による直接的な方法も述べられており、精度評価にもっとも一般的に使用されている26-28。関連するすべての要因を説明する方法はひとつではないため、興味あるそれぞれの目的に応じて、正確に測定する正しい方法を選択する必要があることを強調することが重要である。精度測定の結果の解釈は、正確な統計データ分析の深い理解と併せて、つねにかなり具体的な知識と仮定に基づいている必要がある。 IOSデバイスを使用したin vitroとin vivoの精度研究間の精度測定には、よく知られた違いがある29、30。スキャンされた物体の表面特性、口腔環境要因、患者の動きなどの要因は、in vivoでのIOSの精度に悪影響を与える可能性がある31、32。参照となるマスターモデルの幾何学的形状が不足しているため、in vivoでの真度パラメーターの決定は困難である。一方、in vitroでの研究はIOSの精確性が予測でき、よりin vivoに似た実験装置によって有効なデータの取得が容易になるかもしれない33-35。 本研究の目的は、歯面および光学特性が生体をシミュレートするようカスタマイズされた模型を使用して、全顎および部分歯列領域のin vitroでの新製品、既製品でのデジタル印象法および従来の印象法の精確さを評価することである。この研究の帰無仮説は、全顎歯列および部分歯列に対する異なる印象法の間に統計的に有意な差はないというものである。vitroの真度は10.6 [3.8] μm(CO)から58.6 [38.4]μm(iT)の範囲であった。部分歯列印象の真度の最良の値は臼歯部であり、従来の印象法(CO)で9.7 [1.2] μm、デジタル印象法で21.9 [1.5] μm(PS)であった。結論:この研究の条件内では、特定のIOSから取得したデジタル印象は、部分歯列の従来の印象に代わる有効な選択肢である。IOSデバイスでは、全顎歯列印象は依然として困難である。ただし、特定のデバイスは臨床適用範囲内であることが示された。これらの結果を裏付けるにはさらなるin vivo研究が必要である。

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