新時代の歯周外科
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第7章 歯肉退縮に対するアプローチ図17e,f 採取した上皮付きのconnective tissue.脂肪組織が残存しているため,graftのためにはこれを除去しなければならない.脂肪組織の厚みは移植歯肉の受容側への挿入を困難にするだけでなく,術後の移植片への速やかな血管新生の妨げになりかねない.脂肪組織をていねいに除去すると,まるでポメラニアンやパピヨンの洗浴後のように,驚くほどその量が減少することがある.しかし,臨床的にはまったく問題がなく,質の高い結合組織のみを使用するほうが合理的である.図17a,b 55歳,女性.₃₄の歯肉退縮症例.₃は一見,根面被覆が容易に思える症例であるが,歯肉退縮の面積は広く,周囲の角化歯肉は消失している.実際は,Millerの分類ClassⅡ,Cairoの分類RT2と診断される難易度の高い症例である.Millerの分類ClassⅡの症例は,往々にして術式の選択に迷う.角化歯肉が消失しているためCAFを適応できず,また,角化歯肉獲得を兼ねてFGGを行うようにも,前歯部では審美性に問題が残る.このような症例ではtunnel techniqueとSCTGの併用が適応されるが,筆者はあえてSCTGではなく,上皮付きの結合組織移植片を用いて露出部歯肉の壊死や吸収に対応した.ab図17c,d ₂~₅に歯肉溝内切開を行い,MGJを越えるpouch flapを形成し,それぞれの切開を貫通させtunnel flapを形成した.歯肉退縮量の大きいほうが,かえってpouch flapの形成は容易である.₃の露出根面の外形に沿った上皮付きの結合組織を口蓋より採取する.受容側の縫合後,即時に保護床(止血シーネ)を装着.cd図17e図17fCASE:22153

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