ビジュアル歯科臨床解剖
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9Chapter1 三叉神経と上顎骨・下顎骨の解剖 歯科医師が歯科医療を行ううえで絶対に押さえておかなければならない神経の1つに三叉神経がある.12対ある脳神経(図3)のなかで,三叉神経は第V脳神経(Cranial Nerve V:CN V)であることから,その枝である眼神経・上顎神経・下顎神経はそれぞれV1・V2・V3と表記される(以下,脳神経は日本語とともにCNと表記し,何番目の脳神経かはローマ数字により表現する).脳神経はすべて頭蓋窩にある穴(孔や裂など)から頭蓋を出ていき,主に頭頸部に分布する.頭蓋窩はその構造により前・中・後頭蓋窩(図4)に分けられる. 前頭蓋窩には篩骨篩板があり,嗅球が篩骨篩板を介して嗅神経(CN I)を鼻腔に伸ばしている(図5,6). 中頭蓋窩には大小さまざまな構造物がある(図7).視神経(CN II)は視神経管を通り眼球に到達し視覚を司る.上眼窩裂は動眼神経(CN III),滑車神経(CN IV),眼神経(CN V1),外転神経(CN VI)が通過し眼球の運動および眼窩の知覚等を支配,正円孔は上顎神経(CN V2),そして卵円孔は下顎神経(CN V3)が通過する(図8). 後頭蓋窩には頭蓋窩最大の孔である大後頭孔がある(図9).また,内耳孔は顔面神経(CN VII)および内耳神経(CN VIII),頸静脈孔は舌咽神経(CN IX),迷走神経(CN X),副神経(CN XI)が通過する.舌下神経管は舌下神経(CN XII)が通過する(図10).実際の解剖体で三叉神経を観察するためには硬膜(脳脊髄を保護する硬い膜)を除去する必要がある(図11,12).われわれが日々の診療でもっとも知っておかなければいけない三叉神経(CN V)はこのようにして頭蓋から出ていく.頭蓋窩の穴と12対ある脳神経を知ろう2図2 上・中・下鼻甲介.❶上・中鼻甲介という骨は見当たらない?鼻甲介 歯科において,サイナスリフトに必要な解剖として上顎洞の解剖を学ぶ機会が増えてきているが,鼻腔の解剖に触れる機会は依然少ない.一般的に鼻腔には上・中・下鼻甲介が存在することが知られている.顔面頭蓋を構成する骨として下鼻甲介は挙げられるが,図1のリストの中に上・中鼻甲介という骨は見当たらないと思う.これは,下鼻甲介は骨そのものの名称,上鼻甲介,中鼻甲介は篩骨の一部だからである(図2).下鼻甲介中鼻甲介上鼻甲介

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