補綴・咬合の迷信と真実
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●補綴装置を連結する場合の利点 連結することで得られる最大の利点は、インプラントにかかる負担を分散し、より均等化できることにある。インプラントや歯槽骨への負担を減らすことで、スクリューの緩みなどの技術的合併症やインプラント破折などの問題のリスクを減らすことにつながる。 しかしながら、下顎は機能時に顎骨がたわむことが報告されており、それにより補綴装置の緩みや破損が起こるともHobkirkら8により報告されている。複数本の補綴装置を正確に適合させるのは技術的にたいへん難しいということも考慮に入れる必要がある(表4-2-1)。●補綴装置を連結しない場合の利点 連結を選択しないもっとも大きな理由として考えられるのは、口腔清掃のしやすさである。連結されたインプラント間の清掃は非常に困難であるため、特殊な清掃器具が必要とされる可能性が高い。もしも清掃が可能でない場合には、プラークの蓄積に起因したインプラント周囲粘膜炎・周囲炎を惹起する危険性が高まる。連結しない場合は補綴装置の製作が容易にはなるが、特に隣接面コンタクトの調整には時間を費やさねばならない。●文献による比較 Sadid-Zadehら9によるシステマティックレビューでは、連結冠は単冠に比べるとわずかに技術的合併症が多前歯部臼歯部インプラントポジションが補綴に対して理想的十分な顎堤間距離がない場合軟組織レベルインプラント軟組織形態のためのエマージェンスプロファイルの形態修正が必要な骨レベルインプラントスクリュー固定型プロビジョナルの製作インプラントポジションが補綴に対して理想的セメント*スクリュースクリュースクリュー(最小で4mmまで)セメント*セメント*インプラントポジションが補綴に対して理想的でないインプラントポジションが補綴に対して理想的でない小さい幅径のインプラントなどで、咬合面形態を調整したい場合インプラント*クラウンマージンは2mmまでを推奨する。スクリュー固定セメント固定△審美性◎◎再介入の容易さ△○維持力◎△インプラントの埋入難易度◎△インプラント体への適合◎◎プロビジョナルの調整○○咬合◎◎即時荷重の場合△○顎堤間距離に制限がある場合△×余剰セメントの有無○図4-2-3a、b セメント固定型の補綴装置の注意点。a:理想的な状態。b:間違った製作方法。余剰セメントの取り残しが生じやすい。図4-2-4 インプラント上部構造の選択におけるディシジョンツリー(参考文献7より引用・改変)。表4-2-1 スクリュー固定とセメント固定の違いab88

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