補綴・咬合の迷信と真実
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Chapter1 補綴修復に関する迷信3補綴装置のフィニッシュラインの位置は歯肉縁下であるほうが望ましい迷第一選択は歯肉縁上である真●条件により歯肉縁下に設定する必要もあるが… 全部被覆冠の治療を成功させるためには、適切な保持形態・抵抗形態を有した支台歯形成や支台築造を行うこと、また補綴装置に合わせた形成デザインと、適切なマージンの設定が必要条件である。水平的なマージン形態は補綴装置の種類により決定されることが多いが、垂直的な形態に関しては、理想的には清掃性の観点から歯肉縁上にすることが望ましい。 Lindheら1は、角化歯肉が十分でない場合にマージンを歯肉縁下に設定すると、歯肉縁下プラークの蓄積から歯肉炎へとつながり、結果的に歯肉退縮を引き起こすと報告している。 しかしながら、特に前歯部においては、支台歯の色を隠すためや、メタルセラミックスのメタルを隠すために、歯肉縁下にマージン設定が行われることが多い。そのほか、過去の補綴装置のマージン設定やう蝕・歯牙破折・摩耗・楔状欠損・酸蝕などの理由や、補綴的に支台歯の高さを増加させるため、あるいはフェルールの獲得のために、歯肉縁下に設定されることがある(図1-3-1)。●歯肉縁下マージンを選択する際の注意点 歯肉縁下マージンにすると、有害な歯周組織の炎症を引き起こす可能性があるといわれてきた。その理由としては、歯と補綴装置の境目に問題がある、補綴装置の立ち上がりの豊隆が大きすぎる、口腔清掃が難しい、縁下プラークの病原性が増加する、生物学的幅径が侵害される、といったものが報告されている(図1-3-2)。●臨床研究での結果は? Orkinら2は、金合金やセラミックエビデンスで検討すると…図1-3-1 クラウンマージン設定位置による利点と適応。図1-3-2c 治癒後に最終補綴装置を装着した状態。マージンとの適合が良く、健全な歯肉状態が確認できる。図1-3-2b フェルールの獲得と生物学的幅径の回復を目指し、舌側に骨整形をともなう歯冠長延長術を行った直後の状態。プロビジョナルレストレーションが縁下マージンであったため、まったく合っていないことがわかる。図1-3-2a 歯肉縁下にう蝕が認められ、生物学的幅径が侵されている症例。特に₃舌側に歯肉の炎症が認められる。(執筆・須田剛義)歯肉縁下・すでに補綴装置が存在する・支台歯の変色が存在する・支台歯の歯質が十分でない・支台歯の高さが十分でない・歯周組織への影響が少ない・プラークコントロールがしやすい・印象やセメントの操作がしやすい・歯質の保存(エナメル)がしやすい歯肉縁上・歯肉同縁14

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