生涯にわたる顎顔面の成長とインプラント治療
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顎顔面の持続的成長にともなうインプラント治療の合併症とその解決法 船登彰芳に備え、近心のジルコニアフレームにはアンダーカットを設け、陶材を築盛し補綴装置を作製している(図1)。 オープンコンタクトに起因するフードインパクションの不快症状を患者が訴えたならば、その解決法は2通り考えられる。1つは前方部位の天然歯が補綴歯でなければ、補綴装置を外し天然歯の遠心部位に光重合レジンでコンタクトを再現する。もう1つは前方歯が補綴歯である場合、補綴装置のコンタクト部位のポーセレンを削除し、マテリアルは硬質レジンになるもののフレームに直接築盛し、コンタクトを回復するように備えている(図2)。いずれにしても、適正なスクリュー固定の補綴装置を作製するためには、セメント合着補綴装置に比較して、より厳密なインプラント埋入方向が求められる。審美領域の上部構造と天然歯の不均衡の問題 Heijら8)は、若年者のインプラント埋入の決定時期は、橈骨の成長が停止しているか否かで決定すべきだと報告した。またその論文のなかで、Long facial syndromeの患者は、25歳まで顎骨が垂直方向に劇的に成長するため、インプラント治療の禁忌を促した(図3)。そして、そのような問題は顎骨の成長に個人差はあるものの、イ図2-a~c 最終補綴装置装着からわずか6ヵ月後にオープンコンタクトを認めた。スクリュー固定の上部構造を外し、ダイヤモンドバーで近心コンタクト部位の陶材を除去。硬質レジンで再びコンタクトを回復し口腔内に補綴装置を装着した。図3-a~c 前歯部インプラント治療を希望して来院した19歳の女性。咬合関係は3級であり、Long facial syndromeの患者に分類される。矯正治療は受け入れられず、インプラント治療を行った(治療終了時20歳;a)。しかしながら、術後5年(25歳)、顕著な切端レベルの不均衡を認めた(b)。埋入後6年のデンタルX線からは天然歯が1.6mm成長していることがわかる。この時点で患者は補綴装置の再作製を希望した。図3-d~f 仮着セメントを用いていたため、アバットメントをレスカントゥアにすることによって歯頚線の調和を可及的に図り、アバットメントはそのまま使用し、補綴装置を再作製した(d)。その3年後(29歳)の時点(e)で切端レベルの違いは認めていないものの、患者にはいずれまた再作製の可能性を伝えざるをえない。しかしながら、インプラント埋入時に結合組織移植(f)によって、軟組織のオーバーコレクションを行ったため、再度良好な結果を導けたと考える。2009年2月2015年5月bbcaaefdc39

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