生涯にわたる顎顔面の成長とインプラント治療
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シンポジウム2 はじめに インプラント治療が臨床に応用され、およそ50年の月日が経った。その間に、当初は無歯顎症例に導入されたインプラント治療は部分欠損症例、そして審美領域へと適応症の拡大に至った。若年者へのインプラント治療は禁忌とされているものの、20歳以降であれば顎骨の成長は停止すると考えられて多くの患者の部分欠損にインプラント治療が応用されているのが現状である。 しかしながら、そもそもインプラントそのものはアンキローシスした歯と同じであり、正常な歯は顎骨の成長にともなって呼応するように成長するが、インプラントは移動しないことが自明である。今回、本学会が招聘したDaftaryらは、インプラント補綴の長期的予後における合併症として「オープンコンタクト」、「審美障害」、「咬合の変化」の3つを挙げて問題提起している1)。なぜそれらの問題が起こりえるのだろうか。筆者は、その多くは青年期以降も生じる顎骨成長に起因すると考えている。 本稿では、顎骨成長に起因すると考えられる合併症への補綴的対応の実例を紹介し、今一度コンベンショナルな歯科治療の重要性も述べてみたい2)。 オープンコンタクトとその対処法発現頻度 天然歯とインプラント補綴装置のコンタクトが離開するオープンコンタクトは、4割前後の症例で発現するとされている3~6)。 また福西ら7)は、3施設でのオープンコンタクトの出現率は57%であったと報告し、インプラントに対して歯冠が長く隣在歯が連結されておらず、動揺がある症例においてオープンコンタクトを生じやすいとした。すなわち歯周病既往歴があり、天然歯の歯冠-歯根比が適切な状況ではない症例で起きやすいということであり、これは臨床実感として同意できるものである。対処法 その対処法であるが、インプラント治療において筆者がこの数年で大きく変わったのが、セメント合着からスクリュー固定への補綴装置の作製法の移行である。その理由は、インプラント周囲炎やオープンコンタクトを惹起した場合、補綴装置をいったん外して対処するためである。具体的には、将来危惧されるオープンコンタクト図1-a、b 咬合面はジルコニアとし、唇側のみ陶材で前装する。近心コンタクト部位にはアンダーカットを付与したホールを形成し、その部分は陶材で築盛して作製したスクリュー固定の補綴装置を作製する。顎顔面の持続的成長にともなうインプラント治療の合併症とその解決法船登彰芳1987年 広島大学歯学部卒業1998年 なぎさ歯科クリニック開業    5-D Japanファウンダー、米国歯周病学会(AAP)、米国インプラント学会(AO)、    ヨーロッパインプラント学会(EAO)、ヨーロッパ審美学会Affiliate member略歴Akiyoshi Funato石川県開業ba38

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